仲間に魔力を奪われ、パーティーを追放され全てのステータスがFランクに落ちた元勇者だが世界最強の「魔力効率化」術式があるので自分を拾ってくれたFランクパーティーと共に成り上がる
プリントを後ろに回して!!
第1章 ロゼッタ創成
第1話 スキル解放までの話
俺の名前はアレン。
冒険者育成学校で出会ったイケメンで性格の良いレックスと清楚で可愛いユリカと3人で魔王を倒し、真の勇者になることを目標にパーティーを組んでいる。ちなみにユリカは俺の彼女だ。
そして今はまさに魔王との戦闘中だ。
「今だ!アレン!!」
レックスが魔王に火炎魔法をぶつけ、出来た隙に俺は聖剣デュランダルを振りかざす。
ぐぁぁぁ!といううめき声とともに魔王の体は粉々に砕け散った。
「やった……ついにやったよ2人とも、俺たち真の勇者になることが出来たんだ!!」
俺は今までの思い出が頭によぎり、目に涙を浮かべながら2人の方を振り返る。
すると
グサッという鈍い音と共にレックスが俺の体に剣を突き刺していた。
「やっと隙ができた。悪いなアレン真の勇者になるのは俺達2人だ。」
「な!?どいう…こ…と…」
訳が分からない。
レックスを問い詰めたいが体から力が抜けていくのを感じる。
「お前に刺したこの剣は宝剣シャーリー。刺した対象の魔力を奪い取ることの出来る剣だ」
「なんで…こんなこと」
混乱する俺は咄嗟に彼女であるユリカの方を見る。
しかし彼女の顔には全く動揺はなく逆にニヤニヤと俺を嘲笑していた。
「アレン。お前に分かるか?貴族であるこの俺がお前みたいな愚民と比べられる気持ちが!ましてやリーダーとしてチヤホヤしてやらなん俺の気持ちが」
レックスは剣を何度も何度も俺に突き刺す。
魔力を吸い取る剣のため俺の体に穴が空くわけではないが、憎悪をまとったその顔はもはや俺の知る親友がどこにもいないことを示していた。
「おれ、たち…3人でいつも一緒に夢を…」
「アッハハハハハ!!このバカまだ状況が分かってないようよレックス!!」
今まで聞いた事のないような下品な笑い声を上げ笑ったユリカはレックスに近づくとその腕を抱きしめる。
そして俺の胸を思い切り踏みつけた。
口から血が吹きでる。
「アンタは最初から私達に利用されていたのよ。じゃなければ貴族であるこの私が穢らわしい愚民と恋愛ごっこなんかする訳ないじゃない!」
「そういう事だアレン今まで俺の思うように動いてくれてありがとな。お前の力全て俺が頂いていくぜ」
レックスはそう言うと横にいるユリカとキスをし始めた。
俺は言葉にならない呻き声を上げる。
「なんだ?まさかまだ分からないのかユリカも最初から俺の女なんだよ。今までキスすらさせて貰えなかった理由ももう分かんだろ」
「誰があんな汚い下民とキスなんか」
ユリカは汚物を見るような目でこっちを見る。
「救いようのないバカに最後に1つアドバイスしてやる。これからは魔法よりもここの時代だ。」
そう言うとレックスは自分の頭に指を指す。
そして2人は転移魔法をつかいその場から消えてしまった。
俺は魔力を奪われてしまったせいか、その場で気を失ってしまった。
数時間後俺は目を覚ました。
なけなしの魔力を全て回復にあて何とか体は回復した。
これで俺の魔力は空だ。
ひとまずはギルドにいってアイツらの事を報告しないと。
俺の魔力を使って何をしでかすか分からない。
しかし、そこであの二人の外道っぷりが想像以上であることを思い知らされる。
「あ、あいつアレンじゃね?」
「うわっ!どの面下げて街に帰ってきたんだよ」
「クソ野郎出てけ!」
「これだから平民は」
今まで俺に親切に接してくれていた街の人達が急に俺を白い目で見るようになっていたのだ。
「なんであいつまだ生きてんだよ」
「ユリカ様可哀想。あんなクズに…」
「冒険者やめろよ恥さらし」
ギルドに入ると俺を見るやみんなお喋りを止めコソコソと陰口をしはじめた。
「ニルナさん聞いてください!」
俺はいつもクエストを受注してくれていたニルナさんに話しかける。
だが
「あなたレックス様とユリカ様を裏切っておいてよくこの街に帰ってこれましたね?」
いつもの優しい表情ではなく心底嫌った相手に向ける目でニルナさんは話す。
「裏切った?俺があの二人を?」
「白々しい。あなたは魔王に恐れをなして2人を置いて逃げたのでしょう。しかも今までの功績も全てレックス様のものであったと。挙句の果てにユリカ様に強引に関係を持とうとするとは…」
「俺はそんなことしてない!むしろアイツらが…」
ドカッ!という音と共に後ろにいた大柄の男に俺は投げ飛ばされる。
「ウジウジとムカつくんだよてめぇはよ!」
そう言うと俺はその場で何度もそいつに殴られた。
魔力を奪われているせいで体にまだ力が入らない。
周りの人は助けるどころかカタルシスを感じているかのような表情で俺を見ている。
「アンタ大丈夫?」
街をフラフラと歩いていた俺にそう話しかけたのは高そうな服を着た15歳くらいの女の子だった。
美しい金髪でとても美人だが何故かどこか気の強そうな感じだった。
さらにその子は一回りほど小さい女の子を連れていた。
獣人と思われる可愛らしいその女の子は丸っこい耳と短い尻尾をフリフリしながら俺に笑顔を向けていた。
「アンタそんな暗い顔て歩いてんじゃないわよ!危ないでしょ!」
「あ、すいません。」
明らかに年下なのになんでこんな偉そうなんだこの子は
「ん?アンタもしかして冒険者だったりする!?」
急にテンションが上がった様子で尋ねてくる。
「あ、いや今はも…」
「私達のパーティーに入らない!?」
「そんな突然そんなこといわれ…」
「近くのお店で話しましょう!」
俺はその女の子に強引に店まで連れ去られた。
これは確実に高い魔道書を売られ、買わなければ怖いお兄さん達と楽しいコミュニケーションをとるやつだ。
「私の名前はイル。ご覧とおり貴族よ、パーティーの中では拳闘士として活動してるわ!女の子なのにすごいでしょ?」
店に入るなり胸を張りフンッと鼻で息をしながら堂々たる自己紹介が行われた。
というか本当に普通のパーティー勧誘だった。
「そしてこの子は血は繋がってないんだけど、妹のリップ。いつもならあと2人一緒にいるんだけどね…」
「血が繋がっていないのに妹?」
俺はパーティーになる気はあまりないが一応踏み入った質問をした。
「戸籍上は他人なの。でも私達は孤児院で一緒に育ったからもう家族のようなものなのよ。」
なるほど複雑な事情がありそうだ。
そんなことを考えているとバンッと大きな音をたてながら店のドアが開いた。
「おぉい!!最強のパーティーのご来店だぞ!!」
そう言うと店に数十人のイカつい男達が入ってきて、客がいる席もお構い無しに次々と店の中を占領し始めた。
「ヤバっ」
イルは小声でそう言うと必死に男達と目を合わせないように顔を伏せていた。
「いやぁ!兄貴今回のクエストも楽勝でしたね」
男達がぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。
「あぁ、自分の手で母親を殺せばお前は生かしてやるって言った時のあのゴブリンの親子の顔。たまんなかったな」
「ええ、ええ。あの泣きながら母親を殺すシーンはマジで最高でした!そんなことしたって結局は殺すのにww」
ゴブリンは基本的に人に害をなすモンスターだが、たまにいる賢いやつは人間との共存を図ろうとしている。
人の言葉が分かるレベルで賢いゴブリンならきっと共存を求めただろうに。
外道だな。
「ん、そこにいるのはイルじゃねぇか?」
男達の1人がこちらの存在に気づいたようだ。
「おいおい、誰かと思ったらこの街いやこの国で1番と言っていいほどの雑魚パーティー【ロゼッタ】の皆さんじゃないすか!?」
男達の1人のチャラそうなやつが絡んできた。
自然と店内の視線が全てこちらに集まる。
「なんだ?その男は、また新しい雑魚をパーティーに入れるのか?」
イルは下を向いて耐えている。
それに対して小さい女の子であるリップはあまり動じていないようだ。
「このガキ何こっちを見てやがる?」
チャラ男のヘイトがリップに向く
「あぁそうかこのガキ耳が聞こえなかったんだよな?獣人なんて耳と鼻の良さしか取り柄ねえのによw」
イルはじっと耐えている。
「あ、この男どっかでみたな?今話題の偽勇者じゃねぇーか!」
俺が顔面を殴られているせいか気付くのに時間がかかったみたいだ。
「ギャハハハハハハ!これりゃ傑作だ雑魚パーティーの新メンバーは誰かと思ったら国中をだまくらかして英雄気取ってた偽勇者じゃねぇーか!」
そうかホントに皆そう思っているんだな。
「ちょっとお前の数値みてやるよ。スキル《観眼》!」
そう言うとチャラ男は俺を鑑定し始めた。
観眼か、割と経験のある冒険者ではあるみたいだ。
「マジかよ!こいつ魔法も体力もスキルも何もかもFランクじゃねぇーか!それにスキルも一つだけ《魔力効率化術式》なんだこれ聞いたこともねぇな!」
!?
そうか体が弱りすぎて気づかなかった。
このスキルだけはあの剣でも奪えなかったんだな。
このスキルさえあれば…
「マジかwやっぱりニセ勇者だったんだな」
「全部Fは初めて聞いたわww」
「雑魚中の雑魚じゃねぇーかよ!」
男達は口々にバカにした。
そしてチャラ男はイルの肩を掴んだ。
「1人は貴族の血筋のくせに魔力が弱く格闘しかできない高飛車女、1人は獣人のくせに耳が使えない、1人はエルフのくせに盲目で魔眼が使えない、挙句の果てに新メンバーは全能力ゴミの偽勇者。イルさんよぉ、お前らもう冒険者辞めちまえよ。」
その瞬間バンッと机を叩きイルが立ち上がった。
「うるさい、うるさい、うるさい!アンタ達に私達の何がわかるのよ!私達は本気で冒険者やってるの!本気で夢を叶えたいの!いつかアンタ達、いや世界中のどの冒険者よりも強いパーティーになって私達が次の勇者になるんだからぁぁ!!」
イルは店の外にまで聞こえてしまうような大声で叫んだ。
「………………プッ、ギャハハハハハハ!」
一瞬の静寂が流れたが次の瞬間直ぐに店内は男達の下品な笑い声で埋め尽くされた。
「だからぁ、無理に決まってんだろ!?」
「こいつホントのバカだわ!」
「まず俺達と同じBランク帯になってみな、まぁこの街にBなんて高ランク俺達ぐらいだけだけどなぁw」
男達を見て思わず俺も笑いだした。
そんな俺を見てイルは悲しそうな顔をする。
「アンタも私達を笑うのね。」
「あ、いや違うよ。俺が笑ったのはBランクを高ランクだと言い張るコイツらが滑稽だったからさ。」
男達は笑うのをやめてこっちを見る。
「偽勇者さんよ今なんつった?」
「いや、B程度でよくそんな肩で風切るような振る舞いができるなと思って。」
「いい根性だガキ。FランクがBランクにたてつく気か?」
「いいぞやるならやろう。ただ店内でやるのはよそう。」
「表出ろこのクソガキ!」
あまりの急展開にイルは動揺していた。
「ちょっとまってアンタやめときなよ!コイツら腕は確かなの!」
「大丈夫。魔力少し回復したし今の魔力なら勝算は十分さ。」
少し借りるねと言って俺はイルが腰に着けている30cm程の杖を抜くとそれをひと嗅ぎした。
カラクとリリブルの葉で巻いてるのか。
「十分。良い杖だ。」
「ガキぃ早く店出ろ!」
男達は店のドアを蹴り開け先に出ていく。
「何で今日会った私達のためにそこまでしてくれるの?」
イルは俺の袖を掴んで引き止めた。
「君たちは、きっと俺が偽勇者だと分かっていた。なのに心配してパーティーにまで誘ってくれた。それは何故?」
「噂は噂よ。私自分の目で確かめたもの以外信じない主義なの。」
俺は思わずフッと笑ってしまった。
「俺も同じ主義だ。だから君達が最弱のパーティーとは思えない。アイツらの誤解を解きに行くだけさ。」
俺はそう言って店を出た。
さて、久しぶりに使うから今のうちに魔術式を構築しておくか。
スキル《魔力効率化》
対象魔法 《プリシラ》
出力魔法ランク SSS
{あとがき}
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