義務と展望

遠藤良二

義務と展望

 僕は日本の3大義務が嫌いだ。「勤労の義務」「教育を受けさせる義務」「納税の義務」。

 

 まず、僕には病気がある。糖尿病と心の病が。心の病の名前は、統合失調症だ。僕が25歳の時そう診断された。あれから約10年。僕は現在35歳になる。未だに、被害妄想と幻聴という症状がある。少しは良くなったが、寛解にすら至っていない。こんな状態で働け、と言うのか。無理があるだろう。経済的には、生活保護を支給されている。それでようやく生活できているというありさまだ。


「教育を受けさせる義務」については僕は中卒で働き始めた。16歳で独立するのは無理があるから、母と妹と3人暮らしだった。父の顔は遺影でしか見たことがない。何で亡くなったかについては、どうやら自殺したらしい。母が以前、話してくれた。うつ病だったようだ。だから、僕と妹は母の手で育てられた。妹は高校卒だ。僕より妹の方が出来の良い人間だろう。勉強もそこそこ出来るみたいだし、見た目もかわいい。だが、僕はといえば背は低いし、太っているし、若ハゲだし……。見た目じゃどうしてもモテる要素がないと思う。性格は短気で執念深い。いいところがまるでない。


「納税の義務」については、僕は障害年金をもらっているので税金は国民健康保険料だけ払っている。自動車税も減免になる。その代わり、660cc以下の車に限るが。要は軽乗用車までだ。それ以上排気量が多い車だと減免されない。あと、障害の有無に限らず払うのが、消費税、だ。こればかりは仕方ない。だから3大義務の中で、「納税の義務」だけは許せる。こういう言い方をしたら基準が僕にあるみたいだけど、決してそんなことは思っていない。


 病院代を3割負担から2割負担に下げて欲しいという思いもある。でも、なかなか自分の思い通りにはいかず、今に至る。まあ、病院にかかることはあまりないけど、母親がたまにかかっているから、そう思う。


 母は今年で60歳になる。それにしてはしわもそんなに多くはなくもちもちしているように見える。母は無職で、年金もわずかしかないので足りない分は生活保護を受給している。父が自殺してから母はすっかり気弱になり、母も軽いうつ病らしい。母を見ていて思うけれど、経済的な面で父にだいぶ頼っていたように感じた。ずっと専業主婦だったから。


 母は僕を25歳で産んだらしい。難産だったと聞いている。でも、妹は割とすんなり出産したようだ。多分、2人目だったからだろう。はっきりとした理由は訊いていないからわからないけれど。


「義務」とは? 僕が思うに、やらなければならないこと。そういう意味じゃないかと思う。ネットで調べればすぐに意味は出てくるだろう。でも、考えることが大切かと思って、あえて調べないで、考えてみた。


 この少子化の時代に、あえて義務を果たすなら、子どもを作ることが義務なのではないかと思う。でも、そういう義務は法律や憲法には明記されていない。あくまで、自由だ。


 僕は子どもが好きなので、5人くらいは欲しい。まだ、相手もいないからそこから始めないと。そう思うと、一人で苦笑してしまった。嘲笑とでも言うべきか。あくまで僕の希望なので、将来、奥さんになる人と話し合いながら生活していきたい。これが僕の義務であり、展望でもある。これからも日本の将来のため、そして自分たちのために頑張っていきたいと思っている。


                              (終)

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