中 舞台、目まぐるしく



 当日。


 見目美しい王子の心を射止めるため、多くの令嬢がパーティー会場に訪れた。


 集まったのは、きらびやかなドレスを来て、みなりをととのえたご令嬢ばかり。


 彼女達は、互いの様子を窺い牽制ながら、王子に接近する機会をじっと狙っていた。


 ある者は、ストレートに愛くるしく、無邪気を装って話しかけ。

 ある者は、知的な雰囲気で王子が困っている時に、さっそうと助けの手を伸ばす。

 ある者は、トラブルを装って王子に肉体的接触をはかり。

 またある者は、慎ましく手紙を送るなどして、意外な方向から攻めていく。


 しかし、女性の相手に困らなかった王子に心には響かない。


 特別な女性に選ばれた者は、まだいなかった。







 そんな中、桃髪の令嬢が断罪を受けた。

 他の令嬢から詰め寄られ、「ざまぁみろ」となじられながら、何かの罪を擦り付けられていた。


 まさに悲劇のヒロイン、というその光景に王子は心を揺さぶられたようだった。


「なんと可哀そうな娘だ」と思わずかけよる王子の視線は、桃髪の令嬢にくぎ付けになった。


 しかし。


 そこからの恋路の発展を、他の令嬢は許さない。


 青髪の令嬢が、断罪劇の粗を見つけ出し、桃髪の自作自演を追求。


 王子は「だまされる所だった!」と嘆きながらも、青髪の令嬢に感謝の意をしめす。


 結果桃髪の令嬢は、貴族界から追放されていった。


 断罪劇の結末を見届けた後の王子は、青髪の令嬢と良い雰囲気になった。


 けれど。


 やはりそれを、他の令嬢達は許さない。


 赤髪の令嬢が割り込んで、魅了の技術で王子をたぶらかす。


 良い匂いのする香水に、男の気をよくさせる話術。何よりも、他の者よりメリハリの利いた肉体を使って、王子の心を着実に惑わしていった。


「そなたとなら、楽しい夜をおくれそうだ」と述べる王子の鼻の舌は伸びに伸びきっていただろう。


 そしたら、


 最後の伏兵とばかりに、地味な手紙アピールを続けていた金髪の令嬢が姿を現す。


 男性なれしていない様子で必死に愛の言葉を囁く初心な少女。


 そんな意外性をアピールされた王子は、興味がくすぐられたようだ。


「何も知らぬ少女を、余の色に染めていくのもまた一興」と金髪の令嬢の肩を抱いた。


 他に、有効なアピールをできる令嬢はいない。


 このまま、全て金髪の令嬢がかっさらっていくのかと思いきや。


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