第2話
「またチバの勝ちかよ。」
同級生と幼稚園の園庭で、サッカーのチーム分けをしていた俺は、サイタマ相手に6連勝をしている。
「じゃあ次は、トヤマ君」
俺はトヤマ君をチームに迎えた。
「トヤマまで向こうのチームかよ。これじゃあ、絶対にうちのチーム勝てないよ。」
サイタマ君の一番の友達であるオキナワ君が、サイタマ君に泣き言を言っている。
「仕方ないだろ。チバがじゃんけん強すぎるんだから。」
「チバ、お前ズルしてるだろ?先生に言いつけるぞ。」
オキナワ君は俺に向かって、先生という絶対権力者の存在を使って脅しを掛けてきた。
幼稚園生でありながら、既に交渉術の片鱗を見せつけてきたオキナワ君に少しの敬意を払いつつ、俺は冷静に対応した。
「じゃんけんでズルなんて出来ないでしょ。後出ししてるわけじゃないし。単純に運が良いだけだよ。」
本当は運なんかじゃない。俺は、赤ん坊の頃から父親にジャンケンを叩き込まれたせいで、ある種の特殊能力を身に付けていた。
なぜか、相手の手が必ず読めるというズルすぎる能力。
ただ、この一件があってから俺は一発勝ちを続け過ぎると人に不正を疑われる事を学んでからは、いかに運が良くて勝ってると思われるのかを意識して、じゃんけんにのぞむようになった。
この物語は、じゃんけんだけが取り柄な俺の栄光と苦悩と葛藤にまみれた人生の話だ。
というのは嘘で、栄光しかない人生の話だ。
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