第45話/説明
「よくよく考えたら」
物陰に隠れる俺と聖浄さん。
聖浄さんは俺の言葉に反応して此方を見詰める。
「聖浄さんって転移系の術理が扱える術師なんですよね?」
ならば、黄泉島まで即座に転移出来るのではないのだろうか?
そう思ったが、聖浄さんは首を左右に振った。
「それは難しいですね……聖浄家の術理は方陣術理ですので」
「どんな能力なんですか?」
俺は何気なく聞いてみて、あ、と思い出す。
今は協力関係にあるが、近しい人間であろうとも、自らの掌を晒す様な真似は出来ない。
「……そうですね、私の方陣術理は、境界を作り、繋げ、隔絶する術理です」
そう、聖浄さんは教えてくれた。
「流力で抽出した力を地面に敷き円陣を描く、周囲に紋様を描けば、その紋様と同じ紋様を持つ者しか侵入する事は出来ない。そして、同じ紋様をした円陣と、別の場所に同じ円陣を描くと、その円陣から別の円陣へと移動する事が出来ます」
「え、良いんですか、そんな話」
俺は、それを教えてくれたと言う事は、聖浄さんが俺を信頼していると言う訳でありがたいのだが、聖浄さんにとってはこんな話をするメリットは無いだろうに。
「良いんです。これでも貴方の事は信用してますから」
……うわぁ。
そう言われて、なんだか感激だなぁ。
「と、こういう理由がある為に、私は自らの能力で黄泉島には行けません」
あぁ、そうか。
この術理は大前提として、一度訪れた事がある場所が必要なのだ。
彼女の説明からして、円陣は最低二つ必要であり、円陣は現地で刻まなければ意味がない。
しかも即席で作れる様子もない為に、緊急時に脱出する事も出来ない使用だ。
「私も、一人ならば『黄泉島』へ行くのは可能だにゃん」
茂みの方で隠れていた俺たちの会話を遮って鹿目メルルが出て来た。
「一応は協力関係にある、故に私も自らの術理を開示するにゃん」
「どんな転移の能力なんだ?」
俺は彼女に聞く。
「我が鹿目家は憧憬術理と呼ぶ転移術を使う。簡素に言えば、脳裏に思い描いた場所に移動する事が出来る術理だにゃん」
聖浄さんの術理よりかは、多少制限が軽いな。
「この術理は細部の情報が必要だから、主に写真や映像と言った媒介物を必要とする。が、私には自らの視界を共有出来る眼球がある。眼球で見た光景を脳裏に焼き映す事でも能力の発動は容易。眼球を『黄泉島』まで飛ばせば転移は可能だが……生憎、自分しか移動が出来ない欠点があるにゃん」
一人しか……なら、術理を使役しても意味ないな。
鹿目メルルの能力は聖浄さんよりかは簡単そうだが、時間が掛かるのはまず間違いない。
同時に、緊急時に移動しようとするのにも不慣れだろう。
自らの命の危機に、呑気に他の場所を考えるなんて、難しいからな。
そう会話をしている内に、鹿目が呼んだ門叶派の人間がやって来た。
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