第37話/両目
「おい」
背後から声が聞こえて来た。
何かと思えば、鹿目が俺たちの事を見ていた。
「わたしはどうなる?」
至極当然な疑問だった。
この先、自分がどんな目に合うのか、知りたいと思うのは当然な事だろう。
「そうですね……」
聖浄さんが考えるが、俺には二択しかない。
鹿目を幽閉するか、殺すか、だ
今の俺には保身しかない。
もしも、このまま鹿目を逃すと言う結論になってしまえば、コイツは一目散に逃げて門叶に報告するだろう。
そうなれば、生死不明であった俺が生きている事が悟られてしまう。
そうなれば、俺に向けて兵力を集中するだろう。
「聖浄さん、こいつは……」
殺すか、閉じ込めるか。
どちらにしようか悩んだ末に、答える声があった。
「私も仲間に入れてくれ」
その声は、俺でも、聖浄さんでも無かった。
それは、鹿目が自発的に発したものだった。
「何を言ってるんだ、あんた」
当然な反応だと自分でも思う。
彼女、鹿目は門叶家の人間だ。
つまりは俺の敵であり、そんな奴を仲間に引き入れることなどできない。
「……一応は、自分がどの立場か分かっての発言でしょうか?」
聖浄さんが、鹿目の立ち位置をはっきりさせる為に言う。
「理解している。だからこそ言っている。私は門叶家の人間だが、それは父が服従していたに過ぎない。私は、彼女らに力は貸しても心まで売ってはいない」
「そう言えば取り入れると思ったのか?」
俺はあくまでも否定的だった。
口ではなんとでも言えるからだ。
「お前ならわかるだろう?門叶は残虐非道で、人の心などまるで分からない怪物だ。私が此処に残されれば、奴は私を見つけ、情報を取った末に、お前を逃した罪で殺される。それが私の終着点だと、そんなのは認められないだろう」
確かに、あの女ならばそれほどの非道をやってのけるだろう。
「……でも、俺は信用出来ない」
「そうですね……」
これには聖浄さんも同調してくれた。
すると、鹿目は顔を俯けて、そして何かを落とした。
それを見ておれはギョッとした。それは、金と銀色の眼球だった。
鹿目の両目は義眼であるらしい。
「信用出来ないなら、それを持ってくれ。それが無ければ私の視界は使えない。目が無ければ逃げる事も出来ないだろう?」
目が見えなければこの迷宮を進む事は難しいだろうし、自殺行為に等しい。
俺は聖浄さんの方を見た。最終的な決断を下すのは聖浄さんだからだ。
「……」
「頼む」
目を瞑りっぱなしの鹿目が懇願した。
そして、聖浄さんが下した結論は………。
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