第26話/追跡
森の中を疾走するバイク型術具。
「聖浄さんッ!どうするんですかッ!!」
俺は声を荒げて彼女に聞く。
この速度の中では、大きく声を張らないと彼女に届かない。
「森を抜けた先に古都がありますッ!其処で鬼童を撒きます!!」
そう言った。
倒すのではなく、あの男から撒くと。
「倒せないんですね!!」
「そうですねッ!あの男と戦って、無事で済んだ者は居ませんッ!!」
ざぁざぁ、と。森がざわめく。
俺は木の上に目を向ける。
其処には、ターザンの様に木の枝から移りながら移動する、鬼童膝丸の姿があった。
「あ~あぁあああああ~!!」
余裕そうに雄叫びをしながら、鬼童膝丸が上空からやってくる。
「聖浄さん、上ッ!」
俺が声を上げると、その声に反応して聖浄さんが軌道を変えて左に寄った。
上空から飛んでくる鬼童膝丸が斧を振り下ろして斬撃が地面を伝う。
「良い反応じゃねぇかっ!おら、こいつぁどうだぁ!!」
鬼童膝丸が手斧を真横に振った。
斬撃が真横を通って、大木をなぎ倒しながら斬撃が迫ってくる。
「ッ!」
ハンドルを握り締めて更に加速する。
そして森に半分程埋まった石を踏み付けると共に、バイク型の術具が大きく飛んだ。
斬撃を回避するが、切断された大木が進路を阻害する様に倒れ込む。
「しっかり捕まって下さいッ!」
聖浄潔良さんがそう叫んで、俺は彼女の腰元に回した手を強く握り締める。
そして、聖浄さんは倒れる大木の隙間を掻い潜っていく。
地面スレスレにまでバイク型術具を斃して、大木を回避していく。
「ひゅぅう~!やるじゃねぇかっ!なら今度はコイツでどうだぁあ!!?」
俺たちに聞こえる様に、鬼童膝丸は倒れた大木を掴んだ。
そして、軽々と大木を持ち上げて、やり投げの様に構えて、そして、投げ飛ばしてくる。
上空から迫る、大木の槍。それは正確ではないが、上空から致死に届く一撃が迫ると言う恐怖が脳裏に過る。
「それそれそれぇえええ!!」
大木を投げ飛ばして、そして腕を軽く回して、また走り出す。
「もう少しで、古都に着きますっ!!」
そう叫ぶと、同時、大木の槍が降り注ぐ。
当たらなくとも、大木が地面に突き刺さる事で地面が盛り上がり、バイクの動きが揺れる。倒れそうだ、とそう思ったが、聖浄さんは何とか操作していた。
「落下しますッ!受け身の準備をッ!!」
「受け、え!?落下!?」
俺の疑問と共に、森を抜ける。
そして浮遊感が体を包みこんだ。
落ちている。森の先は崖だった。
「う、ぉおおおおッ!?」
聖浄さんと俺はバイクから離れて、地面へと落ちて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます