フェンシング男子 エペ団体

 すまぬ。誘惑に負けた。だって好きなんだもん、フェンシング。

 割と変わってると言われたこともあるんですけど、私は昔っからフェンシングを見るのが好きです。同じくらい日本の剣道を見るのが好き。理解力のある方は、もうどういう意味か分かったはず。そう。


 剣のために人を捨てたろ、お前ら。


 エグいっすよ。FPS六十でも残像しか残らない異次元の戦闘。映画、漫画、ラノベと表現の容量を引き上げてもまったく届きやしない目に見えぬ攻防。

 

 私、人生で一度だけ剣道の高段者の方と手合わせする機会に恵まれたんです。気合一発で動けなくなったよね。脳天に衝撃。あー、やられたんだー。


 フェンシングは刺突ですよ?

 しかもフルーレと違ってエペはどこを突いてもオーケーで、かつ一定程度の圧力を加えないとポイントになりません。意味するところは、六三四の剣であります。

 

 剣先をぶつける? 違ぇよ。突くんだよ。刺突で殺してやるんだよ。


 物騒なことを言うんじゃないよと思われるかも知れませんが、二十世紀のフルーレ(エペではない)金メダリストのウラジーミル・スミルノフ選手は折れた剣が目に突き刺さって脳を貫き時間をかけて亡くなられてしまいました。そんな事故があったからこそ、今のあのカッコよくも安全なメッシュ型マスクがあるのです。


 まぁ、そんなゴタクはどうでもよくて、ファンタジーを書くならフェンサーの活躍を目に入れとこうぜという話。


 フェンシングの世界は当たり前だけどヨーロッパが優勢で、あまり知られていないけれども現在でも世界ランク一位に君臨するのは決闘文化が長く残ったフランスだったりするんです。今の時代に決闘なんてと思っているならまだまだ甘い。


 映像として残っているの決闘はガチのエペで、フランスである。


 ちなみに決闘した人はミッテラン時代に大臣をやっています。おい、割と近代的だな。実はヨーロッパには他にもメンズーアという学生決闘の文化があったりとかしまして、ことフェンシングという競技において日本が勝つなんてありえないことだったのです。たとえるなら、


「おい日本、パリ五輪、剣道やろうぜ。ぶっ潰してやるからよぉ」


 そう宣言されてもおかしくないくらいの衝撃でした。それくらいフェンシングという競技はヨーロッパの世界だったんです。


(別に私がやったわけじゃないけど)やったぜ日本。


 フェンシングの楽しみ方は至極単純、先に突いた方の勝ちです。フルーレなら胴体の両面のみ。エペなら躰のどこでも。サーブルなら斬りもOKで腰から上だけ、となるだけ。細かく言うと剣も違うし攻撃権の有無とかややこしい話もあるにはあるのですが……はい。詳しい人はご存知でしょう。剣道と同じく、


 何がどうなったのか見えねぇ……。


 まあ私は動体視力が異様に高い人種なのでカメラのコマに収まるなら意外と見えてるんですけど、だいたいの人は突っ込んだと思ったら警告音とともにマスクの横を光らせ、ポイント取得を主張しているはずです。


 これ。

 これねえ。

 私は一つだけ文句を言いたい。


 ポイントを取った方じゃなくて、取られた方を光らせてくれないかなあ。

 色々な対人ゲームをやってきた身からすると、取った方にリアクションが起きるとすごい違和感があるんです。ついでだから言うけど赤と緑ってのもどうなの。なんか直感的に分かりにくいんですよ。


 やられた方が赤く光る。これくらい単純にしたほうが絶対に分かりいいと思うんだよぼかぁ。そもそもが決闘の形式を残してるんだしさ。そりゃ血腥ちなまぐさい歴史かもしれないけど、血腥さを封印するのは違うと思うんですよ。


 フェンシングを健全なスタイルにするんじゃなくて、決闘を健全で安全なスタイルにしましょうよ。ダメですか。ダメでもいいです。


 おめでとう、フェンシング日本代表。

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