第7話

 舞踏会当日、マクミラン家は馬車で王宮に向かった。

「エイダ、今日は落ち着いて行動するのですよ」

「わかっておりますわ、お父様」

「楽しんできなさいね」

「はい、お母様」


 馬車は王宮に着いた。

 王宮にはもうすでに、多くの貴族達が着いていた。

「今日は人が多いですわね」


 エイダが言うと母親も頷いた。

「今日は王子の18才の誕生日でもありますからね」

 マクミラン子爵はそう言うと馬車を降り、女性達をエスコートした。


「お父様、お母様、お誕生日のプレゼントはお持ちしなかったんですが、良かったのかしら?」

 エイダの素朴な質問に、両親は顔を見合わせてから笑った。


「誕生日のプレゼントはきりが無いから禁止されているんですよ」

「そうなんですか。良い王子さまなんですね」

 エイダは少し王子に興味がわいた。


 王宮に入ると音楽が鳴っていたが、王と王妃はまだ現れていなかった。

「私、すこし周りを見てきてみます」

「迷子にならないようにきをつけるんですよ、エイダ」


 エイダは舞踏会の会場の中を歩いていた。

 すると、突然殺意と強い魔力を感じた。

「え!?」


 何者かが、シャンデリアの紐に魔力を送り、落とそうとしているらしい。

 シャンデリアの下には、栗毛色の髪、茶色の目をした綺麗な格好の青年がいた。

「危ない!!」


 エイダが全力で青年を突き飛ばすと、その直後、シャンデリアが落ちてきた。

「きゃああ!!」

「どうした!? 事故か!?」


 エイダが助けた青年は状況を直ぐに把握して、青白い顔になった。

「ありがとうございます。あ、あなたは!? 命を助けられるのは二度目ですね」

「え!?」

「森の中で怪我を治してくださったことを、覚えていませんか? 私はハワード・フォスターです」

「ハワード王子、お怪我はありませんか!?」


 エイダはそれを聞いて恐縮した。

「王子様だったのですね。突き飛ばしたりして申し訳ありませんでした」

「いえ、命を救って頂いたのですから、何も謝ることはありませんよ」


 ハワード王子は微笑んで立ち上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る