第5話
エイダとケイシーはマクミラン家の門の前に付いた。
「ここが私の家……」
エイダがじっと屋敷を見ていると、ケイシーが言った。
「さあ、入りますよ」
「はい」
馬車は家の前まで走ると、止まった。
「おりますよ、エイダ様」
「ケイシーありがとう」
ケイシーは門をノックすると、大きな声で言った。
「エイダ様のお帰りです」
すると、ドアが開いた。
大きな屋敷から、メイドと執事が出てきた。そして、その後からマクミラン子爵と妻がやって来た。
「おかえりなさい、エイダ」
エイダの母親、シンディーが言った。
「あの家は狭かったろう? これからは広い部屋でのんびりと過ごすといい」
父親のメルヴィンが言う。
「ただいま、お父様、お母様」
エイダは父親と母親にハグをした。
「その腕輪は?」
「ダーラからのプレゼントです。魔力を押さえる効果があるそうです」
「そうか」
メルヴィンは懐かしい名前を聞いて、目を細めた。
「今日は、エイダの誕生日と帰宅記念パーティだ」
メルヴィンがそう言うと、シンディーも頷いた。
「とはいっても、家族だけの小さなパーティーですが」
シンディーはそう言って、エイダを屋敷の中に招き入れた。
食堂には、『エイダ様、お誕生日、ご帰宅おめでとうございます』という布が張ってあり、テーブルにはご馳走が並んでいた。
「まあ、凄いですね。お祝いありがとうございます」
エイダは父親と母親、メイドと執事にそれぞれ頭を下げた。
「さあ、食事にしましょう。好きな物を好きなだけお食べなさい」
「はい、お母様」
「森での暮らしは、寂しくはありませんでしたか?」
母親からの問いかけに、エイダは微笑んで答えた。
「森の動物たちとお話をしていましたから、寂しいことはありませんでしたわ。ケイシーもいましたし」
「誰にも姿は見られなかったかい?」
父親が尋ねるとエイダは頷いた。
「あ、でも一度だけ、森の傍の湖で私と同じくらいの年齢の男性とお会いしましたわ。怪我を治して差し上げましたの。でも、私名乗りませんでしたから、大丈夫だと思います」
父親は静かに頷いた。
「そうか、そんなことがあったのか」
「さあさあ、料理が冷めてしまいますよ! 食べましょう!」
ケイシーが口を挟んだ。
「いただきます」
エイダは鳥の丸焼きを少し取り分けてもらい、一口食べた。
「美味しい」
「こちらのテリーヌも美味しいですよ」
「はい、お母様」
歓談を終えると、エイダはお風呂に入った。
「お着替えを手伝いますよ、お嬢様」
「一人で出来ますから、大丈夫です」
エイダはのんびりと湯船に浸かって、広い風呂の中でため息をついた。
「森の家とはずいぶん違いますね」
エイダは風呂を出て、寝間着に着替えた。
「お父様、お母様、おやすみなさい」
「おやすみ、エイダ」
エイダは父親と母親にハグをして、寝室へ行った。
寝室の窓からは、街の明かりが見えた。
「人が多くて、すこし怖いですわ……」
エイダはふかふかのベッドに入り、眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます