二話 二試合目
そして、放課後。
バド部の先輩たちのところへ向かう途中にあの彼女と出会ってしまった。俺はもしかたらこの時から一目惚れをしていたのだろうかと前のことと同じ現象に陥る。ここは違う。そして、彼女が一言。
「何?」
当たり前だが、この時は初めて彼女と会った訳で、決して仲良くないのは当たり前である。でも、彼女がいたのはバド部を見れる体育館の空気孔?みたいな所の近くだから、俺はこう言った。
「バド部に入るの?」
この一言も合ってる。そして、彼女は明らか動揺した。俺はおそらく変わったのはこの後だと思い、そのままの嫌な空気を味わう。
彼女の後ろにある体育館の鉄扉開いた。そこから出てくる女王様は、三年全国大会候補の瓜生希菜子先輩である。
「賀翼くん、早く来なさい!...ん?あんた、もしかしてうちに入るの?」
先輩が俺の好きな人を誘う展開は必ず決まる、そしてその後が問題であった。
「え...別に、たまたまここを歩いていただけです。」
「たまたま...ね〜」
先輩の目つきが鋭くなった。そして、彼女の手をなめまわすように見つめた。
「君、バドミントン、やってたでしょ?」
「え...いや」
「嘘はつかないで。その手を見れば、わかるわよ!だって、私の手と同じマメができているもん!」
「...」
この時の先輩は何を思っていたのだろうか。
「...ねえ、一度私としてくれない?」
「...え」
「私、君、気に入ったから!そこの少年より素質ありそうだって!」
俺はただ苦笑いを返すだけの機械となるのではなく、こう言った。
「いやいや〜先輩、それは酷すぎますよ!」
先輩は笑った。ここで俺がバドミントンが楽しくなさそうな表情、会話の空気感を醸し出したことで、選択が変わったのだろうと思った。
「...じゃあ、やります。でも、一回だけでよろしくお願いします。私はもう...」
「大丈夫よ!私はあなたのこと理解してるから。」
先輩は彼女の耳のそばでそっと小さく呟く程度に励ました。実は俺にもその一言は聞こえていたが、そのまま聞こえないふりをした。
そして、成るがままに先輩と彼女の試合が始まる。
審判は俺ではなく、2年のエースである
そして、始まる。三年の最強女王vsトラウマを抱えた少女の一騎打ち、2点先取対決。ここで、先輩は圧倒的な力を彼女に見せつけることになる。俺は端から見て、その場だけがまるで戦場のような緊張感を感じさせるほどであった。先輩の強みは、相手をよく見ることだ。どういうことか、先輩は敵の隙を探し、そこを思いっきしスマッシュを決めるという戦略、戦法を持ってる。彼女の正確なショットを打ち出す時に出る癖をすぐに暴き出し、すぐに実行に移る。彼女はショットを打った際、少し相手の出方を見る癖があるのは、俺も多少気づいていた。でも、そこを先輩は狙う。彼女が打ったクリア、放物線状を描くシャトルが後ろに落ちようという時に、先輩は股抜きで打つ。その羽はいずれネット際に落ちるようになっている。彼女は手も足も出られなかった。先輩は一点獲得した。彼女は点を入れられたのに、どこか嬉しそうだった。
「楽しいよね?バドって」
先輩は彼女に問いかける。
「まあ、そうですね」
「楽しいけど、試合は試合。私、負けないから!」
「...私も負けません!」
彼女はさらに元気になったような気がした。心の中にあった黒い雲がどこか晴れたようなそんな清々しい表情を見せる。俺は、彼女のそういうところに惚れたのだなぁと思った。
彼女のサーブから始める。先輩はもう見切ったようだ。どこにシャトルを飛んでくるかを。彼女が打ってすぐに先輩はプッシュの構えになり、思いっきし地面に叩きつけた。彼女はやってしまったと思ったのだろうな。試合は終わる。勝者はもちろん先輩である。
「最後はありがとね、君、ミスちゃったね」
「すみません、こんな試合になって...」
「ふふ、めっちゃ楽しかったよ!これからも私と打ってほしい!」
「え、でも...」
「バドは裏切らない、楽しいものよ!」
その先輩の言葉により彼女はかつて(14年後から見て)のバドをしていた頃のあの凛々しくて美しい笑顔に戻った。
「...はい!」
先輩のその一言がきっかけで彼女はこのバド部に入ることになったのだ。俺と彼女を含め、総勢5人の極小クラブだけど、のちに世界に名が知れ渡る大きな部となっていくのは、まだもう少しのお話である。そして、瓜生先輩よりも怖い顧問の先生がゴジラのようにゆっくり歩いてくるのであった。
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