第25話

「泊まりたいんですけど」


入れそうになかった冒険者ギルドを後にして俺達は今日泊まるための宿屋に来ていた。


「分かりました。何部屋ご利用になされますか?」

「えーっと、」


俺は三人を見る。


全員俺と目が合うと大きく頷いた。


「一部屋で」

「え‥‥あ、分かりました。何泊しますか?」


一瞬驚いたように目をパチクリとさせていたが直ぐに普通の対応に戻った。


「取り敢えず1日で」

「分かりました。銀貨二枚です」


…………あ、


俺は少し下がって、小声で聞いた。


「(なあ、誰か金持ってる?)」

「(持ってないわよ)」

「(私も)」

「(……私も)」


まあ、そりゃそうだよな。今日入ったばっかりで金なんかあるわけないよな。


俺達はすごすごと宿屋を後にした。あの時の受付の娘の顔はここずっと残り続けるだろう。













「冒険者登録にお一人様銀貨一枚となっております」

「……………帰ります」


ギルドはSランク冒険者がもう帰ったのかさっきまで騒がしさが嘘のように静かになっていた。


なんかレスを感じていたのか職員の対応も悪かったし、、、


というかどこで金稼げばいいんだよ!! 


「あのギルド職員絞めれば良かった」

「やめろ、捕まる」


俺達はギルドを出て適当にぶらつく。金がないからご飯すら買えないから何も楽しくない。


「銀行とかないのかよ」

「チンピラ連中とか悪徳業者に頼むしかないわよ。まあ、高くつきそうだけど」

「なんかそういうのに頼むの嫌だな」

「それは同感」


アリエルは腕を組んでうんうんと頷く。


「やっぱりバイトかぁー。どこかに簡単にお金が入るバイトないかなー?あ!」

「‥‥‥どうしたの?」

「猫がいた」

「猫?」

「よし、追いかけよ」


もうやることないし猫追いかけて捕まえよ。飼い猫じゃなかったらいいなー


猫はやっぱりすばしっこく、直ぐに路地裏に隠れた。すかさず俺達もそこに入って細い道を通っていく。


しばらく追いかけていると猫は小さな猫一匹分が入れるスペースの穴に入ってしまい、流石に追えなくなってしまった。


「あの猫すばしっこかったわね!」

「まあ、猫ってそんなもんだろ」


猫は自由気ままで自分が世界の中心だと思ってるからな。だからこそいいんだが、、ん?


「なあ、なんか聞こえなかったか?」

「うん?…………っ!!聞こえたよ、ユウト!誰かの悲鳴、あっちの方から」

「絶対犯罪だよな?うーん……助けた方がいいと思う?」

「助けた方が良いに決まってるじゃない!」


アリエルは直ぐに賛成する。やっぱり天使なんだな。


「まあ、行くか」


俺達は悲鳴が聞こえた方へ走り出した。













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