第24話 23-最強の助力者
元老院議員の中にも、ドレイク元老院議員に疑惑を持ち、守星連盟と共に調査に乗り出していた。元老院議員とは言え、自宅に無許可で高位の魔法無効化の結界を展開していたわけだから、事情聴取をされるのは当然だろう、今までは、その権力で逃れていたようだが、守星連盟が動きだせば、間逃れることはできない。連盟・議員が面会要求したが、すぐにドレイクが対応しなかった為、元老院議長権限を行使し、魔法無効化の解除を魔導師数十人で行っていた。ハリーは自身のマントを梔子に羽織らせて、ロゼッタとアイズに梔子を預ける。ロゼッタが、すぐに梔子の容態を確認し、必要な魔法とポーションを用意して対応している。
「俺は、連盟諜報部のハリーだ。クー、いや、文月隊長を頼む」
「梔子さんは大丈夫ですわ!マノーリアと葵をお願いいたします!」
「頼まれました。でも、あいつらの方が強いかも?まぁ戦力増強ってことで!」
ハリーは、両腕のガントレットから、カギ針のような鉄爪を出して走り出す。支獣のダニーがオーガ・ロードをユキと攻撃しているところに加わる。
「ユキ!お前はクーを護れ!ダニー!本気出して良いぞ!行け!ダニー!」
ダニーが巨大化して、オーガ・ロードに爪を立てる。ハリーが、狐耳フォクシアの能力の幻惑を使用する、するとハリーの姿が消える、さらにオーガ・ロードには別のハリーが見えるようで、誰もいないところや自分の兵士を殴り飛ばしている。
「あの、片眼鏡野郎どこ行った!」
「ここだよ」
ハリーはすっと飛び上がり、オーガ・ロードの両目を突き刺す。オーガ・ロードが顔面を抑え咆哮をあげると、次は心臓を一刺しして心臓を止める。カギ爪についた血を払い落とす。そして、葵とマノーリアに声をかける。
「葵、マニー!梔子は無事だ!手加減しなくて良いぞ!」
「ハリーさん!何でここにいるんですか?」
「仕事に決まってるだろ!」
「ハリーお兄様!ご無沙汰しております!って?葵くん?ハリーお兄様と面識あるの?」
「まぁ、分岐の町で団長と3人で…」
「ふ~ん」
マノーリアが半眼で葵を見ている、あの街でマノーリアに、そんな目で見られるような事はしていない侵害だと葵は思う。
「マニー、そういう目で葵を見るな、俺がふたりを呼んだんだ。軽く飲んだだけだ。転移者を把握するのも俺の仕事だからな」
「そうなんですね。ハリーお兄様がおっしゃるなら…」
葵は、腑に落ちない、マノーリアは、何故かハリーの発言には絶対の信頼をおいている。ハリーも白檀と仲が良いから、絶対にエロなはず、絶対にハリーのエロな部分を暴いてやる。と戦闘中にも関わらず、別のところに闘志を燃やしている。葵の心中に気がついたのかハリーが声をかける。
「葵!仕事中だ!別の事考えるなよ!まぁ、白檀が気に入る訳だ、この状況で他の事考えられる、度胸と余裕があるのは良いことだ。ところでふたりのカラダに纏わりついている、紫色のはなんだ?」
「ハリーさんも知ってるでしょ?霊峰神殿で団長達とお忍びで、稽古しているのだから…」
「奥義紫炎…か?お前ら…この短期間で…」
「わたしの色は適応力が高いそうです。マルチパープルと言うそうです。」
葵は、そういえばベルガモット団長とリュウシ師範は真面目なイメージしかないが…まぁ男だからなと納得する。あそこの神殿では、酒は飲めても、白檀が楽しめるような、店はないから稽古にも都合が良いのだろうと思う。
「葵くん!またどうでも良いこと考えているでしょ!集中して!来るわよ!」
「良し!援護してやる。マニー!葵!お前らの力を見せてくれ!」
マノーリアがアリスに乗り攻撃をはじめる。葵は蔦を駆け上がる。ハリーが闇魔法のデコイをかける。マノーリアのデコイよりもデコイの数が多い、まるでミラーハウスにいるように、葵とマノーリアが複数に見える。
「くだらん!その程度でわたしを倒せると思っているのか!」
サラが蔦を更に複数出して、全てのデコイに攻撃する。ハリーが更に闇魔法を顕現させる。
「させるかよ!ハービーサイド!」
黒い霧が立ち込める。すると勢いよく伸びていた蔦が、たちまち枯れはじめる。マノーリアが空中から、葵が懐へ攻撃する。
「フフフ、まだだ!お前らではわたしを倒せぬ!」
サラが黒い炎でマノーリアと葵を阻止する。ハリーの元へと一度下がる。
「いくら切っても生えて来るわね、まだ致命傷を与えられてないわ!」
「クソ!切っても切ってキリがない!ディスピアさえ打ち込めれば…」
「葵!急所技があるのか?」
「ええ、デイトの加護の力を正式に得たので…」
「葵、これを貸してやる」
ハリーは右目に着けていた片眼鏡モノクルを外し、葵に手渡す。
「帝国製のモノクルだ、最大攻撃ダメージを補助してくれる、ターゲットポイントが赤くなった箇所を攻撃しろ!」
「ありがとうございます。お借りします。」
白檀はハリーの事を帝国被れと言っていたが、ハリーのスチームパンク風の服装はちゃんと意味があるんだなと葵は思う。マノーリアが葵の心中を読むように低い声で葵に尋ねる。
「まったく!葵くん、今、失礼なこと考えているでしょ?」
「さぁ!じゃ、行きますよ!騎士長殿!」
葵はマノーリアの問いを無視し走り出す。
「マニー!陽動頼む!」
「了解!葵くん!終わらせてね!」
マノーリアが魔法で陽動し、紫炎の剣技を乱発する。葵の右目のモノクルが、サラの額にターゲットポイントがロックし赤くなる。葵は陽動の加護を2発放つ。
「そこか!紫炎!ロックウォール!クラッシュロック!」
ロックウォールで蔦を防ぎ、クラッシュロックで蔦を切り裂く。
「とどめだ!紫炎!ディスピア!」
「おのれ!星のダニが!何故わたしを?フハハ、そうかそういう事か、加護を得たな?あの忌々しい者達の!だが、我々はお前らのそばで、着実に蝕んでやる!これで終わりではない、我々は常にそばにいる、お前らダニの弱い心の隙に入り込み蝕んで…」
「いいから、いいから、長いよ!ディスピア!」
葵はサラの話が長いので、ダガーで再度ディスピアでサラの霧散させる。
「これで、終わりだな」
「葵!お疲れ」
ハリーは葵にそれだけ言い、ドレイクの元に足を進める。葵とマノーリアも後に続く。
「ドレイク元老院議員、この状況ではここで殺しても、とがめられないが?」
「いや、いや、待ってくれぇ、わたしはサラ、いや、あの悪魔に騙されていただけだ!ほら、わたしだけ化け物になっていないではないか!」
「アイツは、お前との契約とも言っていたが?」
「わたしは何も知らん!皇女様!そ、それと女神様に誓って、わたしは無実だ!」
「とんだ、役者だな!裁判にかけても無実にならんぞ!それにしても、どれくらいの者が加担していたのか、調べるのも一苦労だな」
ドレイクがうつむいている顔をニヤリとしたように、葵は感じた。葵が顎に手をおきながら考え妙案を思いついたようだ。
「ドレイクさん、皇女や女神に誓うって事は、眷属神のデイト・ア・ボットにもって事ですよね?」
「無論だ騎士殿!この国の守護神でもある、デイト・ア・ボット様にも誓う!なんなら、霊峰神殿の神殿長にも誓う!」
「神が許さないなら、仕方ないって事で!ハリーさん、議員もそう言っているので、本人に確認してもらいましょう」
「はぁ?本人って」
「デイト・ア・ボット本人ですよ!まぁ見てて下さい」
「ハリーお兄様!信じられないと思いますが、デイト様は、仮のお姿で現在は霊峰神殿にお住まいなのです。」
葵がリンクを唱える。すると周りの景色が変わり、少女が現れる。そして少女が訪ねてくる。
「神無月さんずいぶんと早いお呼びですね?危機的状況ですか?」
「いえ、悪魔は撃退したんですけど、この国の内部まで、悪魔にとりつかれた人が多いようで、デイト様に手伝ってもらおうかと、あざみさんとこちらに来れますか?」
「首都か…あざみ神殿長にも聞いてみないと…」
デイトが首都に来たいようでウズウズしている。葵は見抜く。
「信仰を高めるのに必要でしょう!また、この地に悪魔がとりつかれないよう、デイト様に浄化してもらわないと!あざみさんもダメとは言いませんよ~」
「神無月さんはお上手ですね。デイト様首都に行って浄化と結界をしましょう」
デイトの横にあざみが現れる。
「明日には来れますか?」
「あざみさんの準備が良ければすぐに行けます。」
「すぐですか?」
「ええ、わたしの本来の姿なら首都までは20歩程ですから」
「じゃ、あざみさん大丈夫ですか?」
「ええ、わたくしはかまいませんが…」
「では、向かいましょう。」
リンクが解除されて元の部屋に戻る。部屋の中には既に連盟の騎士や議長の息のかかった騎士達が、残党を確保して連れ出している。
「今のは少女は?」
「眷属神デイト・ア・ボット様ですね」
「はぁ?」
葵がハリーに話していると、デイトとあざみが入ってくる。
「お待たせしました。」
「待つほど時間たってないけどね」
「あら、ハリー様も御一緒でしたか?」
「ご無沙汰しております。あざみ神殿長」
「わたしは、悪魔にとりつかれた者を選別すれば良いですか?」
「ええ、できますか?」
「まぁ、契約したものと魂を売ってしまったものならば簡単です。」
デイトはドレイクに近寄り、ドレイクに尋ねる。
「契約者はあなたですね。あざみさん聖水をお持ちですか?」
ドレイクがデイトを見て罵倒する。
「たかが、巫女ではないか!こんな小娘に誓えるか!なぜ神殿長でなくこの巫女なのだ!わたしを愚弄しているのか!」
あざみがデイトに聖水を渡す。
「お飲みください、契約してなければ、あなたには祝福が与えられるはずです。さぁ!」
ドレイクが聖水を飲むと、ドレイクは一瞬にして消し炭のようになる。そして、ドレイクの亡骸から、錦糸のような光がいろんなところに張りめぐる。
「この糸をたどれば一掃できますよ。本人達は、もうこの街から、出られないので逃げられません。明日ゆっくり会いに行きましょう。彼らは中級魔族のアスモウにとりつかれたようですね。欲望の悪魔です。」
ハリーやアイズとロゼッタが謎の少女巫女の力に唖然としている。
「やっぱ、デイト様はスゲーな!」
葵がそう言いながら称賛する。
「神無月さんに1日たたずして呼ばれたので、加護を与えたのを後悔しそうでした。」
「まぁ、助かりました。デイト様!じゃ帰りましょ!」
「ロゼッタ、デイト様とあざみさんお泊めすることできるかしら?」
「マノーリア、お部屋は充分あるので問題ありませんよ!ハリー様もいかがですか?」
「俺はまだ仕事が…」
「ハリーさん!今日くらいは、クーのそばにいてやって下さい」
「わたしからもお願いいたします」
葵とマノーリアがハリーに頭を下げる。ハリーは頭をかきながら、困った顔をする。デイトがだめ押しでハリーに伝える。
「神から頼んだ方が良いでしょうか?」
「わかった、わかった」
「じゃ帰りましょ!」
アイズが眠っている梔子をハリーに預け、皆はクローバー治療院に足を進めるのであった。
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