第6話 5-異世界職業選択の自由
「おっす!葵~走り込んだわりには、元気そうだな?」
団長の白檀が、含み笑いをしながら、葵に声をかける。
「おはようございます。団長。走るのは慣れてるので、問題ないですよ。」
「いや~昨日は、笑わせてもらったよ!まさか、しっぽ掴むぞ!ってククク~!まっ実戦じゃ~役にたたないが、勝つために知恵は使ったよな!クーもまだまだだなぁ~」
「団長、俺はかまわないですけど、あまりクーの前で笑っちゃダメっすよ!」
「いや~、わかってるけどさぁ~やっぱ、まだガキだなってな!クーもマニーも成人して、徴兵はぶいて、そのまま騎士団に入っちまったから、同世代と一緒の生活してないからな~その辺うといんだろうなぁ~?しっぽくらい、いくらでもさわらせりゃ良いのにな」
「えっ?良いんですか?さわって?」
「小娘の戯言くらいに、思ってかまわんさぁ~!大昔ならまだしも、なんだったら、俺のさわるか?ホレホレ」
白檀が葵の顔の前に、自分の犬のしっぽをフリフリさせる。
「あまり、聞きたくないんですか…男同士でしっぽさわったら、意味合い、変わります?友情の証しとか…」
「何言ってんだぁ?かわらねぇーよ!男同士でも、愛情表現だ!」
「じゃこの状況を2人が見たら、誤解するじゃないですか~!」
「びゃく兄!何してるの…?」
案の定、朝食のトレーを持った美少女ふたりは、フリーズしている。
「何って、かわいい騎士見習いと、朝のたわむれをしている…?」
「びゃく兄、とうとう見境なくなったの?よりによって、何で葵くんなのっ!」
「葵くんも女性よりも…」
完全にふたりが誤解をしている。
「ち、違う、ちがーう!誤解だってふたりとも!団長も悪のりしないで下さい!」
「あ~お~い、せっかく会えたのに~つれないのね~うふっ!」
白檀がさらに悪のりで撫で声をだし、葵の胸あたりを人差し指でなぞる。
「あっー!うふっ!じゃないです!団長マジでキモい!そのガタイでお願いだからやめて下さい!」
「ブハハハ~!やっぱ、お前ら朝からおもしれ~な!」
「全然、おもしろくないっすよ!」
「葵くん、そ、その男の人が…じゃないんだよね…?」
「あたりまえだ!ほら!団長…完全にマニーが真に受けてますよ!」
「別に、マニーとクーが真に受けても、かまわないだろ?…あれ…あっ…ふ~んまんざらでもないって事か?」
「そりゃ、この容姿で性格も良い子達だし、この先そうなるのも、ゼロじゃないですよね?2人とも美人でかわいいんだから!…あっ」
葵の素直な意見に、免疫のない美少女ふたりは、朝から真っ赤になり、蒸発寸前の状況。無理もない、食堂には、ほぼ使節団の面々が揃っている。そんな外野からは、「マニーに春が来た!」とか「クーに良縁なら団長の肩の荷もおりるな~!」や「俺の騎士長が~」とか好き放題に、ひやかす声も聞こえる。挙げ句の果てには、どっちが葵とくっつくか、賭けが始まる始末…葵はこのふたりは、年少で職位についてるけど、騎士団の仲間からは、愛されているなっと思ったが、このふたりには、いじられてなんぼ!なんて概念はないだろっと思ったら、案の定梔子が吠えた!
「お前ら~!好き勝手言って~!今日の訓練は、スペシャルメニューなんだから!覚悟しておけよっ!」
涙目で梔子が訴えるが、この手の事は、梔子とマノーリアの方が、経験不足で格下なので、梔子のリアクションに、さらに盛り上がる、それを助長させているのは、団長の白檀だ。
「この騎士団…大丈夫か?」
葵は、呆れているが、白檀が先頭きって、朝から軽口を叩くのは、昨日言っていた"明日死ぬかもしれない仕事"からくるのだろうと思った。命を懸ける仕事だからこそ、オフの時は、バカな事言って、笑いに変えているのだろ。統率のとれた組織は大切だが、信頼関係がなければ、いざという時には、統率は、崩れてしまうと思う。
いつもは、軽口を叩きあっていても、信頼しあっていれば、お互いに、命を預けられるのではないか?と思う。白檀が高圧的な団長であれば、白檀のご機嫌とりやゴマスリをはじめる奴らもいただろう。世界最強の男なのに、あれだけ周りの部下に、気を遣い、声かけらるのは、尊敬できるのかもしれない、それをあのキャラで、そうしているのを、周りに気づかせないようにしている。がさつそうに見えて、部下思いの団長なんだろうと思い、騒がし朝食は終わっていた。午前中は、梔子とマノーリアのスペシャルメニューのハードな訓練も終わり、あまりに冷やかす団長に梔子とマノーリアが激昂し、誰か死ぬんじゃうんないの?って思うほどの、激しい模擬戦をしていたが、3人とも、かすり傷程度で済んでいる。梔子とマノーリアふたりがかりでも、白檀は「このくらいの訓練しなきゃ、つまらねぇ~」と口にする余裕を見せていた。鳳凰白檀の強さは圧倒的のようだ。昼食となり、葵は午後の予定をマノーリアに確認をした。
「午後は、日本人の人と会うんだよね」
「そうね、外交と産業担当文官の方達と同席させていただくの、団長とクーも一緒よ」
「なんて人だっけ?」
「柴崎直哉さんって方よ、今はバルーンフルーツ社の代表をなさってるわ」
「3人は面識あるんだよね?どんな人?」
「3年前にね…エッチというか…女の子が好きというか…白檀お兄様の方が、仲がよろしかったから、わたしとクーは、その時…まだ見習いで、皇女様の同行で、一緒にいただけだから…」
マノーリアは、何故かその日本人の事を聞くと、喋りづらそうにする。クーはとなりで、あたしに聞かないでよ!っと無言で訴えている。葵も会えばわかるから、わざわざ白檀に聞く必要もないのにと思い。昼食を終わらせる。約束の時間になり、葵達はバルーンフルーツ社へ到着し、文官達の会合が終了し、柴崎との面会になった。
「白檀!久しぶり!団長就任以来か?」
「そんなになるかぁ?2年ぶりか?」
「マニーとクーは、あの時以来だなぁ!ずいぶん女性らしくなって!皇女様は元気にされてるか?」
「お久しぶりです。柴崎さん」
「お久しぶりです。柴崎さん、皇女様もお元気です。皇女様も柴崎さんがこちらで成功されてるのを大変お喜びになっておられました。それと、今日、急遽同席させていただく事になった、こちらが神無月葵くんです。」
「はじめまして、神無月葵と言います」
「あぁ~はじめまして、神無月くん、葵くんと呼ばせてもらって良いかい?会えて嬉しいよ!僕の事は、直哉と呼んでくれ!」
葵は、初対面の挨拶でこのフランク感を出せるのやっぱりこの人、意識高い系?と思いつつ、でも今のところ、マノーリアとクーの態度の理由がわからない。
「葵くんは白檀達の国の保護施設に入るのかい?」
「えぇ、ロスビナスには、一緒に行こうと思いますが、詳しい事は、良くわかりませんが、団長の許可いただいたので、騎士見習いになりました」
「なかなか、筋が良いだよ!葵は!魔法が使えれば申し分ないんだけどな…」
「また、ある意味、思いきった決断したね~騎士団に入るなんて」
「子供の頃から、剣道やって、いろいろあって辞めちゃたんで…マニーやクーに助けられたのが幸運でした。使節団の皆さんも快く受け入れてくれたので」
「葵くん。騎士団が嫌になったらいつでもおいで、うちの会社で面倒見るから」
「あっ、ハハハ…ありがとうございます…」
騎士団幹部を目の前にして、そんな事言わなくて良くない?と思いつつ、愛想笑いで受け流す。
「白檀。葵くんが魔法使えれば…ってのは、戦術的な話しか?それとも、単純に葵くんの生存率の話しか?」
「まずは、後者だな。2年間は葵を保護の名目で、騎士団預かりにできるが、そこからは、残るためには魔力が必要になる。人耳の連中は皆、魔力で亜人耳の連中と互角に闘えるが、葵は魔力を持たない。技量や知略で優ることはできても、いざ戦いになった時、使えるのと使えないのでは、大きく違うからな、魔力を持たない葵を、死地に配属するわけにもいかないからな」
「なるほど、最低限、騎士団が基準とする魔力は、必要って事か?それは単純に低魔法で言うと、回数何回くらい、使用できれば良いかな?」
「そうだな…最低50だな、何故だ?」
「うちが開発中の新製品だ。日本人だけでなく、魔力量の少ない人達にも、需要あると思うよ。魔力が欠乏した時にも使える。低魔法で60回使える、石にマジックポーション垂らして、回復時間待てば、再度使用可能だ」
柴崎は、ブレスレットをテーブルに置いて説明する。そのブレスレットは、こちらの人達が自分の御石をアクセサリーにしたものに良く似ている。このブレスレットには、メインの石のとは、別に透明な石が施されていて、柴崎の説明によると、その石は残魔力量を色で教えてくれるそうだ。柴崎はそのアクセサリーの横にもう一つブレスレットを置いた。
「先に出したのは廉価版。ロースペック品ね。こっちが騎士様向け、ハイスペック品。回数は一緒だけど、魔力回復方法が全く違う。もちろんポーション回復も可能だが、こっちは、自身の魔力を貯めておける。常時装備しているだけで、魔力回復し使用できる。単純に自身の魔法使用数が倍になる。もちろん、人に貸すことも可能。デメリットは、御石の発動魔法よりも、威力・効力が減ること、ハイスペックで8割で、ロースペックが6割の魔法になる」
「スゲー物…開発したなぁ?」
葵以外の人が、目を丸くし驚く、葵も革新的開発とは理解できるが、今までなかったんだ?と思う。
「犯罪利用の懸念や魔法協会、神殿関係者から反発がこないでしょうか?」
マノーリアが柴崎に質問する。
「犯罪利用は防げるし、さっき言った通り、威力が落ちるので、騎士団が押さえ込まれることはないと思うよ。マニーの言うとおり、問題は、女神への冒涜とか禁忌の開発とか言っちゃう人達なんだよね~」
そいうことね。と葵も納得する。最高神の女神への冒涜とか、信仰からの反発ね。あっちの世界でも、人型ロボットがどうみたいな、人がいると聞いたことがある。と葵は思った。
「それで、俺たちを呼んだわけか?さすがに皇女様を呼びつけるわけにいかないよな?」
「そいうこと!皇国の女神の鏡が、これにネガティブな反応しなければ、問題ないし、製品化できれば、間違いなく有事の際は、兵士の生存率は上がるのわかるだろう?」
「わかった、俺は騎士や兵士が道具で、生き延びれる確率が上がるなら、賛成だ。約束はできないが、皇女様に国に戻ったら話してみる!」
「頼むよ!まずは、この国と皇国に販売するつもりでいるからよろしく!みんなに、試作品だがハイスペックのブレスレットを提供するよ!次に会うと時に、話を聞かせてくれ!葵くんは、マニーかクーに魔力提供してもらって使ってくれ!それとみんなに、この前発表したイヤリングも提供しよう。」
「あっ…ありがとうございます。」
「ってことで、仕事の話しはここまでだ!マニーもクー来てくれてありがとな!こんな早く、あの見習い達が騎士長と斥候隊隊長だもんなぁ~すごいよ!」
マノーリアと梔子がほめられているのに、何故か微妙な顔をしている。
「まぁ~まだまだ小娘だけどな!ふたりは文官達と宿舎に戻れ、俺たちは直哉と男同士で酒を飲む!」
「白檀!わかってる~!」
ノリノリのふたりを見て、マノーリアと梔子が侮蔑の眼差しで、ふたりを見ている。
「白檀お兄様?本当~に飲みにいかれるだけでしょう~か?」
「葵くんは、びゃく兄や柴崎さんとは、違うんだからね~」
マノーリアと梔子が、葵も連れていこうとする白檀を止めようとする。なんとなく、葵はこの流れで、何をこの美少女ふたりは、警戒しているのかを…エッチとかスケベとか女の子が大好きと言われる男が行く店と言えば…葵は異世界にもあるんだぁと思ったが、男のエロは、世界が変わっても変わらないそいうものだと、葵も男の都合で納得する。
「何が違うんだよ~!葵も男だ!何も違わん!なぁ~葵」
「団長、ここで俺に、ふらないで下さいよ…」
葵は、ここで素直に言ってもふたりから株を下げる必要もないし、あたりさわりのないこと言おうと決め、自身最大級の爽やかな笑顔を顔面に貼りつける。
「ふたりが、何を心配しているか~俺はわからないけど…直哉さんと久々に団長もあって、積もる話があると思うし、ふたりとも社会的地位がある人だから問題ないと思うよ!」
「葵くん、いいこと言うね~!マニーもクーも信用ないなぁ~俺も転移した頃は、必死だったけど、ご覧のとおり、この世界で成功も手に入れた。」
ふたりは、腑に落ちない顔をしつつも、宿舎に戻る事にし、部屋を後にする。席を立つ時に、マノーリアが小声で葵に一言だけ伝える。
「信じてるから…」
葵は何を…?と思ったのと、マノーリアは彼女でも奥さまでも、ないですよね!と問い返したい気持ちになりつつ。頷かず笑顔で手をふり見送る。ふたりが、ドアを閉め完全に立ち去ったのを確認した瞬間、3人は目を合わせる。
「ハァー!俺を清廉潔白な聖人だとでも思ってるんですかね?」
「葵くん、さっきふたりに嘘ついたでしょ?何をふたりが心配してるか、もう気がついているよね~?まぁ上手く言ってくれたから、乗っかったんだけど?」
「気づいてますけど、言えるわけないじゃないですか~、ふたりに聞こえてたかわからないですけど、マニーなんて、信じてるからとか言ってましたよ!」
「ふたりとも、葵はそんな事しないと思ってるみたいだからなぁ~」
「葵くん、好きだよねそいうこと、好きだよね?」
「ハイ、大好きです。欲望にまみれた普通の青年です。団長~俺どうすれば良いですかぁ~?いつか俺ボロ出しますよ!既に事故起きてますし」
「事故?何かおもしろい話の臭いがするね~?直哉さんも聞きたいなぁ~」
白檀が葵が転移後にあった事故の件を話す。柴崎も腹を抱えて笑う。
「既に、ボロは出てるだろ?あいつらにも、良い経験だろ?」
「今は、葵風邪にひいた感じだね?淡い恋心感じて毎日楽しいだろうなぁ~、ましてや、事故起きてふたりとも運命感じてるかも?」
柴崎が楽しそうに葵を冷やかす。
「どうせなら、俺も株下げたくないじゃないですか?まだ、風邪ひいたくらいじゃ、俺のオスの部分見たら一気に冷めますよね?」
「葵、俺の義理の弟になりたかったのか?」
「なんか、団長の弟になるって聞いたら、クーには、手を出さない自信できました。」
「マニーに手を出しても、義理の兄だ」
「ウソ!?」
「マニーは、妹のような存在だ!現にマニーは、俺の事をお兄様って呼んでるだろ?」
「葵くん、美少女から侮蔑の眼差しで見られるのもなかなかだぜ!」
柴崎が爽やかな笑顔で親指を立てながら誇らしげに口を開く。
「直哉さんどんな性癖ですかっ!あのふたりが、あんなにおふたりが、エッチな店に行くと思ってるんですかね?あの娘達に店入るところ見られたとかですか?」
「俺、店で働いていたんだよ!しかも、白檀の紹介でな」
柴崎は、3年前の出来事を話す事にした。
柴崎が転移したのは、ストロングスピア防衛戦の最中に、城塞都市付近で発見された。日本人の転移が、頻繁になった頃で、柴崎はその年で4人目だった。しかし、先の3人は、モンスターに襲われたり、保護したが自殺してしまい、生きた日本人の証言を聞けなかった。当時、日本人でこちらの世界で生きていたのは、ロスビナスに1人だけだった。ストロングスピア周辺は、日本人の情報が乏しく、国が崩壊寸前だったことにより、日本人の間違った情報が多く、柴崎はかなりの迫害を受けた。伝説や伝承にも日本人は、異世界の民として出てくる事があり、皇女がその事実を世界に広める為、防衛戦に参戦しつつ、各国の首脳と会談したりと奮闘した結果、守星連盟を動かす事ができた。柴崎が皇女と初めて会った時の事は今でも鮮明に覚えている。
「転移して、たぶん1週間くらいかな?…なんとか生きていたけど、死んだら夢覚めるかな?とか考えてた。もう限界だったんだろうな。そんな時に皇女の環さんが、僕を探しだしてくれて救ってくれた…で汚い僕を泣きながら抱きしめてくれた」
"「ごめんなさい!この世界の住人を代表して謝罪します。これからはあなたのような日本人を増やさないように、わたしが動きます。本当にごめんなさい」"ってな
柴崎は少し目を潤ませつつ遠い目をする。
「あん時の環は、必死だったよ、日本人を死なせたらダメって!防衛戦の最前線から戻ってきて、噂を聞いた瞬間に、飛び出して行きやがってな!俺とマニーとクーで環も探して、自分も初陣の戦いで、精神的に疲れてたのに、この星の誰よりも、今助けを求めている人がいる!って聞かなくてな」
「なんか、今のところスゲーいい話なんですけど?そういえば、マニーが言ってたんですけど。直哉さん保護断ったんですよね」
「そうだね…」
柴崎は、また語り出す。
その後、防衛戦が落ち着きはじめ、柴崎は、ここラストスタンドの王都で保護されていた。皇女から皇女直轄の施設を作るから、一緒に来ないかと言われたが、このまま保護され続けることで、皇女に甘えるのではと思い。同い年で頻繁に会っていた白檀に相談し、何がしたいと言われたので、何でもやるから、金を稼ぎたいと言ったら、4区の北門街を紹介されたそうだ。
「ああ言った店は、みんな訳アリだしな、日本人だとかなんのとか気にしない奴らばかりだからな!」
この世界では、未成年や奴隷や人身売買は違法だが、成人女性が自身の意志で性的な商売に身をおくのは、それほど軽視される事ではないらしい。
「店で働き初めて、金も良かったし、住む場所も提供されたから、環さんにロスビナスには行かないと、白檀から伝えてもらったら、どんな生活をするか見に来るって…」
「俺は止めたんだぜ、環が行くような場所じゃないって!マニーやクーは絶対来るな!って言ったら、あいつら、見習いとはいえ、皇女様お一人では行かせられませんって言い出して、仕方なく…」
北門街に若い女性が歩いていたら、想像は簡単だスカウトの嵐だ。案の定、柴崎が働いていた店に着くまでに、何人にも声をかけられたらしい、スカウトの内容も北門街では普通だが、3人にとってみれば、蒸発して姿を消したいくらいの内容だった。柴崎の店に着く頃には、3人は白檀にしがみついて離れなかった。
「まぁ~環はいろんな町をみたり、いろんな人と接した分、あいつらより世間を知って、ちった~大人になったけどな」
「それで、皇女様の施設より、エッチな店選んだ人とイコールであの態度なんすね?」
「まぁ~そうだろうね!あのふたりには、かなりの刺激だったろうね。僕にとっては、この世界で差別されず、チャンスをくれた街だから、感謝してるけどね。まぁスケベなのは否定しないけどさぁ!」
「じゃあ、そいうことで行くか!」
「団長~どういうことですか?美談にしても!行ったらダメでしょ?」
「葵くんそれは違う。僕は感謝しているからこそ、成功した今、あの街に還元したいんだよ!」
「ただ行きたいだけですよね?」
「じゃあ葵くんは、コスプレじゃないバニーガールに興味がないのかね?」
「なんか先生みたいに言っても…リアルバニー気になります…」
オス3人は夜の街に消えて行くのであった。彼らの夜会は夜更けまで続いたのであった。
翌朝、葵は眠い目を擦りながら、食堂に向かった。白檀の姿を見つけ向かいに座る。
「団長~おはようございます。余計な事は言わないで下さいね!」
「わかってるって何回めだよ!スッキリしてるくせに!」
「だから、余計な事は言わないで…」
食堂にマノーリアと梔子が現れ、マノーリアが葵のとなりに座り、梔子が白檀のとなりに座る。
「おはよう!マニー、クー」
「おっす!良く寝れたか?」
「おはよう…」
「おはよ…」
完全に疑っているじゃ~ん!と葵は白檀に目で訴える。
「ふたりとも元気ないね?具合でも悪いの?」
「その…あの…夕べは遅かったみたいだけど…」
葵は、こう来ると想定し、昨日同様に爽やかな笑顔を顔面に貼りつける。
「もしかして、ふたりとも、一緒にいなかった時の俺が、何してたか気になるの?」
「そ、そんなじゃないけど…」
「ど…どうせ北門街に3人で行ったんでしょ!」
「あの辺は旨い飯屋も多いからな!」
「ふたりには、ちゃんと話しておこうと思ったんだけど…良いかな?」
「何!?」
「俺も男だから、女性のふたりには、話せないこともある。だから団長だったり、直哉さんに、相談することも、これからもあると思う。それはわかってもらえるかな?」
「そ、それは…わかるけど…」
「ありがとう!それと、俺はこの世界の事を知らなすぎる!だから、いろんな場所を見て、いろんな人と話して、この世界の事をもっと知りたいんだ!」
「それもわかるし、早く葵くんがこの世界とかあたし達の国が好きになってくれたら良いなぁって思う…」
「わたしも、葵くんがこの世界に来て良かったって思ってほしい」
「ありがとう!ただひとつ、夕べわかったことがあったんだ。」
「何がわかったの!?」
「わたしも知りたい!」
「かわいい女の子がたくさんいる街に行っても、マニーとクー以上の娘には出会えなかったよ…ふたりの魅力に俺も苦労しそうだよね!」
葵の直球攻撃に免疫ゼロの美少女は呆気なく撃沈!真っ赤になって下を向いている。当然、食堂なので、昨日同様に騎士団の冷やかしも同様に行われる
「お前。騎士より詐欺師になったら?」
「俺、ウソはひとつ言ってませんよ!団長の事をお兄様と呼ぶ時が来るかもしれませんね!」
本日も、騎士団の訓練はウルトラスペシャルメニューの訓練になった。
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