rain calls 729 (短文詩作)

春嵐

rain calls 729

 雨の音のような、通信。

 ぱらぱらと、流れていく。

 捕まえた。


「あ、どうも」


『お』


 通信の先。あなたがいる。


『おはようございます』


「こんばんは」


『夜ですか?』


「夕方ぐらいです」


 時間も、場所も、おかしい。違う。

 それでも。


『今日はこれから仕事の打ち合わせ行って、その後は街を散歩しようかななんて思ってます』


「奇遇ですね。わたしは街を散歩して帰ってきたところです」


『お』


「どこかですれ違ったかも?」


『僕のほうはこれからすれ違うかもですね。ちょっとたのしみ』


 たぶん、住んでいる世界が違うから。出逢うことはない。それでも、この雨のようなノイズと一緒に。通信先の彼のことを考える。

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