第3章『初陣』

第1話『情報』

 その後、議事ドーム内で衛鬼兵かれらに『愛とは何か』また『人類とは何か』……について滔滔とうとうと説明したが、案の定、完全な理解は得られなかった。


 ただ、この世界と彼らの世界の違いについては何となく判って貰えたようだった。


 結局、衛鬼兵団えいきへいだん参謀本部は『この次元では、我らが積み上げし、輝かしき過去の記録は、全く役に立たない』と結論付け、今後は俺がその都度、軍議で議案を提示する……と言うことで話がまとまった。


 とは言え……だ。


 今まで、ろくな恋愛経験も無い俺が、軍の中枢で、しかも『作戦を示す』……なんて可能な訳が無い! 一度も自転車に乗った事が無い子供が、いきなりBMXの世界選手権のコーチに任命されたようなものだ。


 そもそも、前にも述べたが、俺は彼女の事をほとんど知らない。 彼女の会社に御用聞ごようききでった時、受付してくれた彼女に一目惚れしただけだ。


 知ってるのは名前と顔だけ。実は、年齢も出身もわからない! 性別すらも判らない。 あまりにも素敵なので『女性よりも女性らしい』と言われる女装家である事も、正直否定できない!


 あとは、前にも述べたが、彼女の会社のホームページで見かけただけ。俺が宝物にしている彼女の動画だって、ホームページに載っていた、部署紹介の動画だ。


 ……こんな情報不足では、アプローチのしようがないじゃん……。


 ……やっぱり、この恋が実るはずが無い。ユイに言って、アパートに返して貰おう。


「申し訳無いが……」


 ……と、ユイに声をかけようと席を立つと、ひょろ長い情報参謀が目に入った。 そして……


『……『鷹音ようおん 野華ひろか』氏に関する、あらゆる情報を元に……』……と言う、ユニークな声を思い出した。


 そうだ!


 彼女の情報を知る絶好の機会チャンスだ。 もしかしたら、何か意外な接点を見出みいだせるかも知れない


 俺は早速、情報参謀に声をかけた。

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