第11話『秘めたる願い』

「さて、これで良かろう。」


 ……うん。 良き良き。


 ユイは、音もなく『ふわり』……と俺の前に座り……


「申してみよ。 貴様は何を所望しょもうだ?」と言った。




 ……実は、俺には『秘めたる願い』がある。それは、ある女性に寄せた、淡い想い……だ。


 彼女の名前は『鷹音ようおん 野華ひろか


  ……だが、読みを知らない人は彼女を『タカネノハナ』と呼ぶ。 俺の名前、『たいら 盆人はちひと』……『ヘイボンジン』とは、文字通り、産まれた時から異世界の存在だ。


 彼女は、俺がたまに顔を出す、大手企業『㈱アティロム』の受付嬢さんだ。 俺は、彼女の美しさにかれ、一目ひとめで恋に落ちてしまった。


 俺だけでは無い。 彼女見たさに『アティロム社内見学』に応募が殺到し、回線がパンクした事もあったらしい。


 ……彼女が受付業務に就いてから、アティロムの来訪者数は激増! 売上もうなぎのぼり!


 この評判を受け、アティロムの上層部が、満場一致で彼女を次期キャンペーンのマスコットガールに決定したと言う。


 更に鷹音ようおんさんは性格の良さもお墨付きで、誰からも好かれる彼女の人気の秘密を調査したところ『美しさ』と『性格の良さ』がほぼ同数だったそうな。


 ……見た目のみならず内面も美しい……これぞ眼福! これぞ崇高! そう! 彼女こそ『Ms.完璧Perfect』だ!


 ……そんな、大手アティロムを背負って立つ次世代の顔と、中小企業のポンコツ平社員とでは、『月とスッポン』、『雪と砂』だ。 所詮しょせんかなわぬ恋だ。


 ……と、思っていた……


 …………


 ……のだが……


 もしかして……こいつらなら、万にひとつ……鷹音ようおんさんと恋人にしてくれるかも……


 スマホを取り出し、アティロムの紹介動画の鷹音ようおんさんをユイにせ……


「この人と恋人になりたい……なんて願い……叶わないよ……ね?」


 と、恐る恐る聴いてみた。


「それが兄の『ガンボウ』だな! 心得た!」


 ……と、ユイが不敵な笑みを浮かべ、俺の胸の『司令徽章』に『戦略的絶対防衛地帯バトルフィールド』不可侵障壁展開スプレッドと、『議事ドーム』の設営を命じた


 それと同時に『ゴォ〜〜〜〜〜〜ッ』という低い音が鳴り始め、部屋が大きく揺れた!


 うわわわわわわわわわわ〜〜〜!

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