第5話 総司令

 俺は近くの公園に向かった。 ここなら、さっきよりは落ち着ける。


 公園のベンチに女の子を座らせ、さっき買ったおにぎり弁当を渡した。


 ……女の子は瞬時にたいらげ、一緒に渡したウーロン茶も一気に飲み干し、それでも、まだ足りないようだった。


 俺は不憫ふびんに思い、近くのコンビニでおにぎりを追加購入して手渡した。


 女の子は先程さきほどと違い、ゆっくりと、味わいながら食べている。 俺も横に腰掛け、ついでに買った自分の分も食べ始めた。



 ひと息ついたところで、俺は胸に貼り付いて外れなくなってしまったバッジの話を切り出した。


「このバッジが何なのか教えて貰える?」


 女の子はコクリとうなず


「これは『司令徽章きしょう』……この世界での『総司令』のあかしだ」

と言った。


 へぇ〜……そうなんだ……。


 ……


 …………!?


「えっ? じゃあを付けてる俺は、この世界での……その『何とか兵団』の『総司令』って事!?」


「そうだ。 ……正確には『衛鬼えいき兵団総司令部臨時長官 タイラ ハチヒト大将』だ」


 何それ!? ど、ど、どゆこと!?


「この世界では、貴様が上官だ。 あたしは貴様の補佐を勤めるゆえ、何なりと申せ」


「ちょっと待ってくれ! ……俺はただの文房具屋の営業……おまけにタダの平社員だよ!? それが何で軍人? しかも総司令? に祭り上げられてんの!?」


 突如、降って湧いたチンプンカンプンな話に思考が追い付かず、俺はパニック寸前だった。


 ……見兼ねた女の子が、自分の身の上話と、俺が司令官に任命された経緯いきさつを話し始めた。

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