第9章『戦後』

第1話 合唱

「せーの! 乾杯かんぱ〜い!」


 ……ユイと悲しみにくれていたある日、鷹音ようおんさんと俺を囲んで、我々混成部隊が久し振りに藤岡中佐(恩賞で二階級特進)の部屋に集まり『祝勝会』を開いてくれた。


「皆様のお陰です! 本当にありがとうございましたあ!」


 鷹音ようおんさんが、俺に寄り添って、涙を拭いている。


 藤岡さんの「良い写真が撮れましたよ! あとで印刷して、各部署に配りましょう!」……との一言で、大爆笑になった!


 みなさんの温かい拍手に包まれ、本当に幸せだった! 


 拍手が止んでしばらく経った時……


「え〜、実は……」


 お!? 長瀬中将(こちらも恩賞で二階級特進)が何か発表?


「自分と青木名誉元帥(二階級特進でカンスト)が……婚約しましたあ」


 二人で綺麗に揃って、左手の薬指を顔の横に上げ、笑顔で婚約指輪を見せてくれた!


 お〜! おめでとう!


 こちらも割れんばかりの拍手だ!


 アティロム分隊は、ベストポジションから、二人の笑顔にスマホのシャッターを切ってくれた。


 ……撮影会が一段落した時……


 ……!


 ……突然、照明が消え、暗闇が訪れた……。


 ……


 …………


「♪ハッピーバースデートゥユー」


 ……ユイの歌だ。




「♫ハッピーバースデートゥユー」……オジカ小隊と鷹音ようおんさんが加わり、ユイがロウソクを立てたケーキを持って机の上に置いた。


「♬ハッピーバースデーディア……」


「♪ま〜こぉ〜!」……藤岡中佐のソロパートだ!


落合さん以外全員で…

「♬ハァッピィーバァースデェートゥ〜〜ユ〜〜」


『パチパチパチパチ!』

『ヒュ〜ヒュ〜!』


 ……拍手の中で、落合さんがロウソクの火を吹き消し……照明がつくと……


 落合さんの目の前に山のようなプレゼントと……藤岡中佐の笑顔&手には小さな箱が……。


 嬉しさからか、口を押さえて眼からは大粒の涙をこぼしていた落合さんが、箱を受け取り開けると……。


 中には素敵な指輪が!


 落合さんは、涙でくしゃくしゃになりながらも精一杯の笑顔で指にはめ、長瀬分隊よろしく、手を顔の横に上げた。


 すかさず藤岡中佐がその横で同じポーズをする。


 「シャッターチャンス!」


 オジカ分隊は、二人の幸せそうな笑顔をスマホに収めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る