第10話 斬鬼軍《ざんきぐん》

 長瀬達が帰った後……


「閣下!」


 ……『司令徽章』から、例の『情報“コミカルボイス”参謀』の声がした。


「どうしました?」


「先日、お聴きした『悪夢』の原因が判明致しまシタ!」


 ……ヤケにリアルな夢だと思っていたが、やっぱり何か原因があったのか……。


「実は以前『斬鬼軍ざんきぐん』と言う、『対衛鬼兵団えいきへいだん組織』が、我々に宣戦布告して参りまシタ」


 ざ、斬鬼軍ん〜!?


 ユイが「……我等われらは、かつて皇帝陛下の『近衛兵』だった……と言うのは申した事があったよな?」


 ……う〜ん……何かそんな伏線があったような無かったような……。


 俺が懸命に記憶を辿っているのをよそに、ユイは話を続けた。


「実は皇帝陛下は、我々の兵力を憂慮しておられた。 我等、衛鬼兵団えいきへいだんが本気を出せば、この世に存在する『国家』総てを牛耳る事も出来ようから……な」


 ……確かに、これはユイの『自画自賛』では無く、やれちゃうかも。


 俺は例の『甲八の役(第3章『初陣』参照)』『地球外殻イカ焼き化作戦(第6章『第二次攻略作戦』参照)』を思い出し、そう思った。


「我が皇帝陛下は、あたしたちがクーデターを起こした時、それに対抗可能な軍事力を有するもう一つの近衛師団として『斬鬼軍ざんきぐん』と名付けた軍隊を秘密裡に組織しておられたのだ」


 俺はこいつらと、それなりに長い付き合いになったから、こいつらが人を裏切るか裏切らないか……くらい判る。


 ……だが権力者は、素直に『信頼』を寄せられなくなってしまったのだろう。


 悲しい話だ……。



「……皇帝陛下の『帝国』は、我が武力により反乱因子を根絶やしにした為、平和が訪れた。 ……そして、我等も不要になった為、放逐された」


 ユイが哀しげに言った。


「……ところが『斬鬼軍』は、皇帝陛下も気付かぬ間に兵力を増強していたのだ!」


 ……それって……激ヤバじゃん!

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