第7話『転戦』

 無敵の『衛鬼えいき兵団』の活躍で平和が訪れたのは喜ばしい事だが、いくさが無ければ兵士は無用となる。


 お役御免になった彼らは『皇帝』に『転戦』を命じられた。 ……『転戦』と言えば聴こえは良いが、平たく言えば『クビ』である。


 ……放逐された彼らは、寄る辺のない流浪の兵団となった。


 しかし、ここで大きな問題が生じた。


 いくさをするために存在していた彼らは、戦い続けないと消滅してしまうという、過酷な宿命を背負っていたのだ。


 ……そんな彼らの生き残りをかけ、兵団で唯一ゆいいつ、細胞の配列を変えてあらゆる生物に変身する能力を持つ、総司令である、この女の子が、先遣せんけんとして、この世界にやって来たのだと言う。


 しかし、世界が変われば、価値観や思想が全く異なる。


 そこで、それぞれの異世界で『臨時総司令』を任命し、どの異世界が、兵団の適正に合致するかを見極める事にしたそうなのだ。


 このバッジ……『司令徽章きしょう』は『総司令』として相応ふさわしい『正しいright資質staff』を持つ優秀な人材を自動的に選抜する……


 ……なんて都合の良い話があるわけ無く、偶然拾ったのが俺だったそうだ。


『司令徽章きしょう』は、兵団と連絡を取るための通信機になったり、その時々に応じた機能を有しているらしい。


 また、で、戦時中、『司令徽章』の所持者を自衛する機能が付いているそうだ。 


 ……!


 なるほど! それでさっきの、女の子の目にもまらぬ攻撃をすんでのところで防御できたのか! ……あざだらけになったけど。


 ……もし、あの時『司令徽章』が無かったら、俺は最初の一撃で、山を飛び、谷を越え、雲を突き抜け、大気圏を離脱して、宇宙を永久に漂う『平社員』になっていただろう。


 ……それにしても、自衛が『おまけ』とは……やはり価値観は相当違うようだ。

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