マイナーアニソン友の会 season2 ~カバーソング友の会~

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

マイナーアニソン友の会 再始動

『スマイル:こち亀 ED』 CMソングに起用されましたわ

 詩道しどう はやせは、入学式の日なのにギリギリで家を出た。待ち遠しくて一時間早く起きてしまい、アニソンを公式チャンネルで聞いていたらつい聞き入ってしまったのだ。


 アニソンは、はやせにとって活力剤である。特にお気に入りは、「アニメの主題歌になった一般曲」だ。市民権を得た気がして、感動するのである。


 市立 守台華しゅだいか高等学校の門が見えた。


 去年、中学三年生だったはやせは、この学校の生徒が歌った『壊れかけのRadio』を聞いて、ここを受験したのだ。それなりの難関だったが、どうにかはやせの頭でも入ることができた。


 しかし、入学早々退学の憂き目真っ最中である。


 ポニーテールをピョンピョン弾ませながら、ダッシュで急ぐ。


「エクスキューズ、ミー?」


 小さな女の子が、はやせを呼び止めた。


 褐色……違う。これは日焼けだ。とはいえ、黒ギャルという感じではない。元々小麦色の肌をさらに焼いたのだろう。特徴的なのは、青い目である。日本人ではないのか? しかし、どことなく日本人っぽい。


 水色の白いセーラー服とリボンタイの組み合わせが、褐色の肌によく似合っている。


「同じ制服。あんたも守台華高校の生徒?」

「しゅだい、か。うむうむ。でも、場所がわからない」


 迷子か。


「こっちだ!」


 はやせは少女の手を引いて、学校へ駆け出す。


 どうにか時間ギリギリで、校門をくぐった。教室に入り、そこでようやくまだ少女の手を弾いたままだと気づく。


「ゴメン! さすがにクラスはここじゃないよな?」

「ノー。ここで合ってる」


 話を聞くと、どうやら学校の位置はわかっていたが、クラスがどこかわからなくなったそう。


「なんだぁ。おどかさないでよぉ」


 少女は、繋いだ手を握手に変えた。


「ワタシ、リン・クロフォード。今後ともよろしく」

「詩道 はやせだ。よろしくな」


 入学式はつつがなく終了し、部活動紹介に。

 はやせのお目当てである『マイナーアニソン友の会』は、文化部の最後で紹介された。


 

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「新入生歓迎会、何を歌おう?」  


 大島おおしま 優歌ゆうかは、相棒の高山たかやま 唱子しょうこと相談をする。


「そもそも、我々の花園に、新入生は必要なのかと」

「部活動だから、一応活動していることにしておかなきゃね」


 この度、我々「マイナーアニソン友の会」は、同好会となって部室をもらえた。部費は出ないが、自分たちの陣地ができたのである。


「だいたい、二人で気軽に話せる場所がほしいって言ったのは、唱子さんだからね」

「そうでしたわね。ならば、『スマイル』なんていかがでしょう?」


 こち亀の一期EDで、栄養ドリンクのCMにも採用された。知名度は抜群である。


「面白い一年生が、興味を持ってくれるといいね」


 優歌は、CMと同じように、手に書いたメモ書きをわざとぼかす。


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 はやせは、部室の門を叩く。



「はいどうぞー」

 

 コロコロとしたかわいい声が聞こえてきた。

 扉を開き、はやせは部屋の主たちにあいさつをする。


「失礼します。一年三組、はやせです」


 女子の先輩二人は、はやせの姿を見て目を丸くしていた。


「あれ、女の子にしか見えないけれど……その制服。もしかして?」

「だ、男子ですの!?」


 主に、高山唱子先輩が。

 

 詩道はやせは、男子だったのである。

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