東方―とあるわたし達の見聞録―

三点提督

とあるわたしの拠り所―其の壱―

「……ダルい」

 絶賛真夏のこの世の中、わたし達――少なくともわたし――は、実家兼商いをしている博麗神社の境内の掃除をしていた。

 わたしが商いをしているこの博麗神社は、まぁどちらかと言えば人里の連中よりも

妖怪のほうがよく訪れている。

 ――とは言っても、どいつもこいつもたむろするだけで本当に全然お賽銭くれない

のよね?

まぁとりあえず、今現時点ではゆかりさんから仕送りとしてお小遣いや食料なんかを貰っているから生活に支障が出ることはまずないんだけど、

 ――ねぇ?

 いつもいつも朝から晩まで入り浸っているどこかの悪友バカの、「そろそろ飯時だぜ?」の一言だけは本当に癇に障った(少なくとも今は)。

「うっさいわね! ご飯くらい台所で勝手に作ればいいじゃない。あたしは今、この

暑さのせいでそれどころじゃないのよ」

 そんなふうに、魔理沙に向けて怒鳴り散らしたわたしだが、しかしそれに意味がな

い事は充分に解っている。今の状態ではただの八つ当たりに過ぎないからである。けれど、

 ――ムカつくほどまぶしいわね? ほんと。

 今はこの子くらいにしかボロクソに言える相手はいないから……、

「ご機嫌よう二人共ぉ。仲良くしてるぅ?」

 ――なんて思ってる時に限って現れるのよね? この人も。

 私の背後からを通して姿を現したのは、私の昔からの知り合いにして、今現在ではある意味で保護者役を担ってくれている八雲紫やぐもゆかりさん


だった。

「紫さん、あんた一体いつからいたのよ?」

「んふ、ついさっきよ♪」

 そう言って紫さんは愉快そうに微笑み、「そういえば、ねぇ霊夢?」と言って話題

を変えてきた。

「ひょっとしてあなた、最近少しふっくらしてきたんじゃない?」

「え?」

 紫さんは私に「ちょっと見てみたら?」と言って手鏡を差し出してきた。そこに映

っていたわたしは、確かに少しだけ二重顎になっており、顔もどちらかといえば昔よ

りも丸くなっているような気がした。

「……っ!」

 ふつふつと怒りが込み上がってくる。

 ――それもこれも、みんな妖怪共あいつらのせいよ!

 私のストレスの原因はみんなそいつらにあってわたしは何も悪くない。

 ――もう頭にきた。

「ねぇ紫さん」

「どうしたのぉ?」

「……」

 一瞬の沈黙の後、わたしは意を決してこう口にした。

「……もしも私がダイエットに成功したら、宴会開いてあげるわね?」

「んふふ、それじゃあ逆効果じゃなぁい?」

「いいから! とにかくダイエットするから。その為に、私をこんなふうに太らせた奴らを片っ端から潰してくるわ!」

 こうして再び私の異変解決八つ当たりがはじまった……。

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