第44話 ショック
これは、私が通っていた大学三回の晩秋の話である。ロシア語のクラスを取っていたのだが、私の一つ前の席に
私には、コンプレックスがあった。背は高いのだが、体がとにかく細いのである。何とかしようと思い、ダンベルを買ってアーム・カールをしたり、腹筋、スクワットをし、市立体育館のベンチプレスなどもして、飯も母親に肉を食わせてくれと頼み、がつがつ食っていたのだが、どうしても筋肉がつかない。
だから、こんな痩せっぽちを、彼女が好いてくれても釣り合わないと思っていた。彼女の様子を見かねた私の隣の男子学生には、お前、彼女に声をかけろよ、今度、レストランに行って食事しようとか、映画に行こうとか何でも良いんだよ、と言われた。そんな、ある日彼女は化粧を濃くし、派手なイヤリングをしてきた。
ついに、私は決心した。声をかけようと。しかし、校内で声をかけるのは、人目があるので、彼女が下車する駅で声をかけようと考えた。彼女は、大阪の阪急梅田駅で降りた。すると、電車の前方から逞しい男がこちらを見ていた。そして、彼女はその男性に向かって手を振り、満面の笑みで駆けて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます