第6話 アジア人差別だったのか?

 前にも書いたが、私がラスベガスのポロタワーという会員制のホテルのスカイラウンジのバンドでギターを弾かせてもらっていたときの話である。開演は午後の10時で、午前の2時に終わる。


 ある晩、終演後ギターを持って車に向かうと、キャンピングカーに大学生くらいの6、7人の白人がたむろしていた。そして、その中の一人が私にあやをつけてきた。パーティーは、どこだ?ここか、あそこかと言って、地面を指さしてバカにしたように笑う。そして、キャンピングカーにもたれていた数人もフフッと笑う。


 ムカッときた私は、眉間に皺を寄せてそいつをにらむと、別の爽やかタイプのやつが、「俺たちは、父親がこのホテルの会員なんだ。それで来たんだよ」と言った。しかし、私は、この私にあやをつけてくる奴に腹が立っていたので、一度目は、彼の言葉は耳に入らなかった。


 これは、喧嘩になるのかと思った。当時筋トレはしていなかったが、昔、稽古した空手で護身する自信はあった。以前、働いていた旅行社の社長も同僚も空手をやっていた。アメリカ行くのに、武道の経験なしで来るのはリスキーだと私は思う。アジア系は、ただでさえなめられているからね。


 これは、アジア系差別だったのか、それとも私の線の細さをバカにしていたのか、分からない。恐らく彼らは、田舎から出てきて、アジア系との接触があまりなかったのではないかと思う。そして、二度目に爽やかが、「俺たちは、父親がこのホテルの会員なんだ。それで来たんだよ」と言うのがやっと耳に入り、平静を取り戻した。


 マンダレイベイ・カジノホテルに大きなクラブがあり、そこに若い男女が集まってパーティーをやっていると教えてやろうかと思ったのだが、こんな奴に教える必要もないわいと思い、話を早々に切り上げて、車を走らせた。


 駐車場には、逞しい元弁護士のキーボードの車が停まっていた。あとになって、思ったのは、彼は、事の推移を見守ってくれていたようだ。彼に、「ありがとう、大丈夫だよ」と言えば良かったと思ったが、後悔先にたたずだった。しかし、あのガキムカついたなー。こういう場合、どうしてやれば良いのだろう?Fuck offくらい言ってやれば良かったのかな。

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