恋愛アプリを使ってみたら幼馴染と両想いになれました

釧路太郎

恋愛コミュニケーション

第1話

「泉ちゃんって彼氏いないのが不思議なんだけど、もしかして男子よりも女子の方が好きだったりするの?」

「女の子は嫌いじゃないけど付き合うのなら男子だって思うよ。亜梨沙ちゃんは男子よりも女子の方が好きなの?」

「いやいやいや、私も男子の方が好きなんだけどさ、泉ちゃんが近くにいたら彼氏なんて一生出来ないような気がしているよ」

「ええ、どうしてそう思うのさ」

「だってさ、泉ちゃんって見た目もいいのに中身までいい子なんだもん。一緒にいたらみんな泉ちゃんの事を好きになっちゃうって」

「亜梨沙ちゃんだって可愛いし優しいじゃない。私はそんな亜梨沙ちゃんが好きだよ」

「亜梨沙は可愛いってウチも思うけど、泉が近くにいたら彼氏作りにくいってのは少しわかるかも。ウチの彼氏も泉のプリ見たらメッチャ反応良くて逆に清々しいって思ったもん。見た目も良くて性格も良いし足も速いし、これで泉の頭が良かったらウチは神様を一生恨んでたかもしれないよ」

「そうだよね。梓ちゃんの言う通りで泉ちゃんが頭まで良かったら私が泉ちゃんに勝てる部分一個も無い事になっちゃうもんね」

「何言ってのさ。亜梨沙にはその立派な胸があるんだから贅沢言わないの。それに、頭の出来だって同じ学校の同じクラスなんだからそんなに変わらないでしょ。山口みたいに異常に頭のいいやつもいるけど、あんた達ってそんなにびっくりするような差でもないでしょ」

「そうだよね。二十点くらいの差なんて誤差の範囲だもんね。確かに、亜梨沙ちゃんに胸の大きさは負けているかもしれないけど、私はまだまだ成長期なんだからこれからに期待しててよね」

「いや、平均で二十点の差って結構でかいでしょ。それが誤差だったらみんな入試で苦労してないからさ」

「確かに、泉って勉強は出来ないわけじゃないのにテストになると変なミスするもんな。ちゃんと見返した方がいいと思うよ。それにしても、亜梨沙って本当に胸がデカいよな。それだけデカいと肩凝りとか酷そうだよな」

「もう、二人して私の胸ばっかり注目しないでよ。でも、そんなに言うほど肩は凝ってないと思うよ。肩凝りがどんな感じなのかわからないんで実際どうなのかはわからないけど、肩が辛いなって思ったことは無いかも」

「ああ、わかるな。私も亜梨沙ちゃんと一緒で肩が凝ったなって思った事ないかも。その点は持っている者同士でしかわからないこともあるよね。梓ちゃんは持たない側の立場だからわからないかもしれないけどね」

「はぁ、言っておくけどウチの方が泉よりは胸があると思うんだけど。泉の胸は触ってもどこからが胸なのかわからないようだけど、どうやって見分けているのか教えてもらいたいもんだね」

「言っておくけどね、長距離やってる友達の中では一番大きいんですからね。そりゃ、梓ちゃんみたいに余計なお肉がついていると大きく見えるかもしれないですけど、それこそ誤差の範囲ってやつじゃないですかね。私だって長距離を引退してご飯たくさん食べればすぐに梓ちゃんくらいの大きさには追いつくと思うけどね。いや、あっという間に追い越しちゃうかもしれないけどね」

「やだやだ、小さい者同士で比べあっても仕方がないって言うのに、そうやって現実から目を背けるのは良くないと思うよ。それにさ、泉のお母さんも胸はそんなに大きくなかったと思うんだけど、遺伝ってやつじゃないの?」

「胸の大きさが遺伝で決まるんだったら亜梨沙ちゃんはどうなるんですか。それこそおかしいことになると思うんですけど、梓ちゃんはソレについてどう思っているのか聞かせてもらってもいいですか」

「亜梨沙はきっと突然変異なだけで比べるべき対象ではないだけなんじゃないかな。もしかしたら、泉の胸が突然変異なのかもしれないね」

「またまた、それを言うなら梓ちゃんの胸の方が異常なんじゃないかな。お胸よりもお腹の方が目立っているように見えるんだけど」

「もう、二人ともやめてよ。男子もみんな二人の事見てるよ」

「え、ごめん。ちょっとムキになりすぎちゃった」

「こっちこそごめん。ウチもちょっとムキになっちゃったかも。お詫びじゃないけど、お昼に食べようと思ってた菓子パンあげるよ」

「そうね、私もおやつに持ってきたクッキーを亜梨沙ちゃんにあげるわ。ごめんね」

「もう、二人とも私に食べ物渡すのやめてよ。今週からダイエットしようと思っているんだからさ」

「そっか、それなら一緒にジョギングしようよ。亜梨沙ちゃんのペースに合わせるから無理なく走れると思うしさ。梓ちゃんも一緒にどうかな?」

「ウチはやめとくよ。お腹の方が目立っているかもしれないけど、走ると胸が小さくなるって言うし今のままでいいわ」

「走っても胸は小さくなったりしないんだけどな。でも、走る体力も気力も無さそうだから無理に誘うのはやめておくことにするね。亜梨沙ちゃんは走るの今日の夕方からでいいかな?」

「いやいや、私も走ったりしないよ。走るの苦手だもん」

「本当に?」

「本当だよ。走ったら体痛くなっちゃうもん」

「そっか、それなら普通に一人で走っていようかな。部活も引退して走る機会が少なくなっちゃったからね」

「あれ、泉ちゃんは大学でマラソンとかやらないの?」

「うん、たぶんやらないと思うよ。趣味で走るだけでたまに大会に出るくらいかな。大きい大会には出れないと思うけどね」

「そっか、テレビで泉ちゃんが走ってる姿を見れると思ってたけど残念だな」

「大学でマラソンやってもテレビには映らないと思うけどね。私ってそこまで突出して足が速いわけでもないからさ。それなりに早かっただけなんだなって最後の大会で実感したからね」

「ところでさ、二人は恋愛アプリって使ってる?」

「いや、使ってないよ」

「何それ?」

「好きな人の名前と生年月日と血液型を登録して、自分の好きな人が自分の事を登録してくれたらLINEみたいにメッセージをやり取りすることが出来るんだよ。ただ、写真とは送れなくてメッセージと通話だけになっちゃうんだけどね」

「LINEみたいならLINE使えばいいじゃない。それを使う意味ってあるの?」

「よくぞ聞いてくれました。なんと、このアプリは通話とかメッセージのやり取りをすることによってポイントが貯まるのです。貯まったポイントはコンビニとかカラオケとかの決済で使うことが出来るんだよ。この前の休みに彼とポイント使ってカラオケ行ってきたからね。お金のない高校生カップルには必需品ってわけ」

「へえ、そんなに貯まるんならいろんな人を登録してポイント貯めまくればコンビニで好きなお菓子買い放題じゃない」

「それがね、そうもいかないのよ。一度に登録できるのは一人までで、変更しちゃったらその時点で貯まっていたポイントは無くなるらしいよ。ウチは彼と別れてないから試してないけど、亜紀は使う前にポイント無くなってたって言ってたからね」

「世の中そう上手くはいかないんだね。そのアプリって恋人がいなかったら使えないじゃん。泉ちゃん、私達には意味のないアプリでしたな」

「そうね、悲しいけどこればっかりはしょうがないよね」

「って思うじゃない、このアプリの凄いところって、片思いの相手を登録しておいて、相手が自分の事を登録してくれたら知らせてくれるって機能もあるのよ。これって恋愛に臆病な亜梨沙にはピッタリのサービスだと思わない?」

「誰が恋愛に臆病だ。って言いたいけど、実際にそう言うところはあるから好きな人が出来たら試してみるよ。泉ちゃんはどうする?」

「好きな人はいないんだけど、一応登録だけしておこうかな。それってどうやって探せばいいの?」

「えっと、アプリのストアから検索で出てくると思うんだけど、どうかな?」

「名前を入れてもゲームしか出てこないんだけど、名前が変わってたりするかな?」

「そんな事ないと思うんだけど、ウチのスマホにはちゃんと表示されているよ」

「三人一緒の携帯だからそんなはずはないと思うんだけど、じゃあ、アプリから招待することにするよ。その方が速そうだしね」

「ねえねえ、ちょっと聞こえたんだけどさ、そのアプリって私達も招待してもらってもいいかな?」

「亜紀たちも興味あるんだ。じゃあ、せっかくだしクラスLINEに載せておくよ。そうすれば明日にはクラスの中で新しいカップルが誕生しているかもしれないしね」

「そのうちの一組はウチだと思うけどな。梓だけに彼氏がいるのっておかしいもんな」

「亜紀ちゃんは美人系だから彼氏がいてもおかしくないと思うよ。でも、不思議とモテないんだよね」

「うん、梓ちゃんは亜紀ちゃんと違って同じギャルでも常識もあるから彼氏がいるのは不思議じゃないね」

「歩も茜もウチを傷つけるようなこと言うなよ。でも、ウチも梓みたいにいい彼氏見付けてラブラブしてやるよ。サンキューな」


 亜紀ちゃんと歩ちゃんと茜ちゃんがアプリの事を聞いてくれて良かったって思った。でも、私の好きな奥谷君が山口に話しかけに行っているのが気になるな。何の話をしているんだろうって思うけれど、スマホをお互いに見ているって事は恋愛アプリの説明か何かをしているのだろう。

 でも、よくよく考えてみたら私たち三人だけしかこのアプリの事を知らなかったら意味ないもんね。私はこのクラスだけでも良かったんだけど、歩ちゃんと茜ちゃんが他のクラスにもアプリの事を広めてくれたおかげで次の日には学校中で話題の中心が恋愛アプリになっていたよ。

 残念なことに私は両想いの相手ではなかったみたいなんだけど、誰かを登録しているとしたらそれを私に変えてもらう事って出来ないかな。


 出来たらいいな。

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