通信室
月見里怜
第1話 聞こえますか
あー、あー、聞こえますか。
マイクテスト、マイクテスト。
ん、んー…………。聞こえますね。
じゃあ、始めます。
僕は、この世界に悲しくとも、残されてしまいました。
僕は、つい三ヶ月前、最愛の彼女と別れました。
それはそれは、大切な子でした。
あの子が居れば、僕ら以外のヒトが滅ぼうと、世界が滅ぼうとよかったくらいには。
そんな大切な彼女となんで別れたかって?
それはですね、僕のせいなんです。
僕が、彼女を手放しました。
何よりも大切だった、彼女をです。
――――少しだけ、昔話をしましょう。
彼女は、現実から逃げるのが嫌いな子でした。
それはまぁ、この、世界が滅びたときもです。
真っ赤な焼け野原に二人で呆然と立ち尽くしてました。嗚呼、僕たちも死ぬのかと。
周りにはヒト一人も居なかったんです。僕ら以外に。
僕らは二人でそこに座り込みました。
僕は彼女を抱き締めました。
何かから彼女を守るように、庇うように。
でも何も起こらなかった。
ただ、遠くの方で、また爆発音がした。
その時、僕たちは感じてしまった。
世界はこわれてしまったんだな、と。
ただ、僕は彼女とこの壊れてしまった世界で、二人で居られるなら、それでもいいと思ってしまった。
幸せだと、過信していました。
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