無題
とい
第1話 はじまり
僕は尋ねるしかない。
分からないことは分からないままで、いつも同じように誰かの言うことに耳をすませて行動する。
自分で考えることをしてこなかった今までのせいで、僕は言われた事をただこなす人になった。
そんな毎日を過ごしていた。
やりたい事とか行ってみたい場所とかそんなもの何一つない。
ただ生きていくために働いて。
ただ生きていくために寝て、食べて。
そんな毎日に意味を見出せず、でも死ぬのは、
おしい、そう思っていた。
仕事場に向かう道中の1時間。
歌を歌う高い声を出してみる低い声を出してみる。
出せるのは聞くに耐えない声だけれど。
聞く人なんていない。
誰かに聞かれたら恥ずかしい。
誰かに聞かれたら変な奴と言われるか?
そんな事を思いながら。
職場に着いて作業をする。誰でも出来そうなことだが、誰かじゃない僕がしないといけないことだ。
周りと比べて褒められることもあるけど、だからといって自分がすぐれているわけじゃない。
だから、褒められても喜べない。
周りと比べられて何でこんなことも分からないのか? と言われる事もあるけど、僕は自分をすぐれた人だと思う事がないから、できなくても大丈夫と頭で変換する。
だから、何度も繰り返す。
間違いを正せない。
勢いに任せて気持ちに任せても言葉は出てこない。
話すのが苦手。
辛かったら泣いてもいいと、相談して、と言われても何も言い出せない。
いじめる側の気持ちが痛いほど分かってしまう。
僕みたいな人が居たら、それは凄く目障りで気持ち悪い。
他人のせいに出来るほど出来ちゃいないし少し辛い。
気になる子ができても、話せない、話したくない。
自分の事好きになってくれない話せば話すだけ嫌われそう。 「めんどくさ」誰かに言われた。
どうしたらいいんだよ。
わからない分からないわからない。
明日から何しよう少しは希望を持ちたいな。
そして、眠る。
起きていつも通りの朝で今日は何かできそうな気がして。少しだけ希望を抱いて。
ドアを開けて。おはようを伝えて、返されて。
微笑まれて。今日も頑張ってね。なんて言われて。
仕事に向かう。
いつもと同じ筈だったのに。何かが、飛び出してきた。
それを避けようと歩道に乗り込んで壁にぶつかって、壁にぶつかられて。
すぐには死なない。
周りに人が集まるのが分かる。誰かが話してる。
救急車の音がする。
僕のことはいいから、どうか、あの子を救ってあげて。声は出ない。 出せない。
何で、話せない訳じゃないのに、口が、動かないわけじゃないのに、どうしてこんな時まで言葉が出てこないんだ。
今更自分の体が大切なのか助けたいって気持ちは二の次かよ。
ちょっと待て。今、体から離れたら僕は、何にもなくなる。今死んだら僕は。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます