才能のない神主のボクが古の戦士に覚醒しちゃって鬼とか神とかと戦うことになりました。

蒼山次朗

第1章

第1話 始動

東京から少し離れたところにある埼玉県所沢市。所沢駅前は新宿や池袋に比べると規模は小さいが多くの人で賑わっている。


駅前の巨大液晶モニターにはご当地ヒーローの『トコロザワン』が映っている。


超ミニスカートの制服の女子高生。その足やお尻をいやらしい目でみるサラリーマン。


キャバクラのスカウトが若い女性に変え声かえする道端で、ダンボールの上に寝転がる浮浪者。


親父狩りで、男を囲んでかつあげする若者。


時代は変われども、何も変わらない風景がそこにはあった。


足元には、人に踏みつけられてボロボロになった『トコロザワン』のキーホルダー。


それを拾う男がいた。彼の名は西園寺晶さいおんじあきら


「どこも・・いつの時代も変わらぬか・・・」


西園寺は悲しみの表情を浮かべながらつぶやいた。


「なんだい兄ちゃん黄昏て~」

「世の中世知がねぇよな~?俺もやんなっちゃうよ!」


と酔っ払って西園寺に絡む男。その男の左目には殴られた傷のようなものがあった。

きっと酔っぱらって、誰かに絡んで殴られたのであろう。


西園寺はその男に言った。

「変えたいか? こんな世の中・・・」


男は臭い息を吐きながら言った。

「あー?何いってんの?」


西園寺は

「そうだな・・・あれかれら千年以上も経ったか。」


と言い、手の中にうごめうじを見せ、男の左目の傷に蛆を埋め込んだ。


蛆は額にも繰り込んでゆく。


「ガハッ!」「ガアア!!」

「な、何しやがった!?」

と、呻き声を上げる男。


それを冷たく見つめる西園寺はつぶやいた。

「我れが命をかけ守り続けた世界がこれか・・・」

「失った刻を取り戻す」


男の血管が膨れ上がり、目は血走り、汗が吹き出、ミチッミチッと、体の中で変化が起きている音がひしめいている。


「再び始めよう」

「『国生み』を・・・」


西園寺はささやいた。

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