怒り

アカサ・クジィーラ

神の雷

世界には、多く罪を持つものがいる。法的な罪だけでなく、普段の世の中でも間違いが生じる。それが罪となる。この世に、罪のない人間なんていない。だから、その罪を贖うために神は存在する。世の中、そうなってしまった。

遡ること、はるか昔。未だ石器を使ってた時代まで、遡れる。この時から、人間は罪を持ち、その罪に抗うために神を信じてきて、贖罪してもらったのだろう。でも、私は許せない。彼らに真なる現実を叩きつけてやる。そういう気分になった時、私にある力が生まれた。”命の炎”である。それは、人間それぞれにある命、あるいは魂を燃やし尽くし、いずれ死ぬ力。私はこの力により、人間それぞれの罪までもを燃やし尽くしてやる。

それが私、春堂はるどう夜風よかぜである。



私がその力を託されたのは、ほんの数週間前。しがないバイト先の帰り、私は普段とは違う道で帰っていた。その時はなんとも思わなかったが、今思えば定めだったのかもしれない。そして、とある裏通りにたどり着いた時、邪悪なオーラを感じた。後ろ、前、左、右とキョロキョロ辺りを見渡す。もちろんそこにいるはずもなく、気のせいだと感じ、そのまま歩く。それでも何かを感じながら。その時、私の足が止まった。目は赤く充血、血管は滲み出そうなくらいに膨れ上がった。辺りに緊張が走る。その時、私の頭にとある言葉が思い浮かぶ。

”汝如何なる刻も、己の欲望断ち切り、人間滅ぼすべし”

それからの記憶はない。ただ少し手の方に冷たく暖かい炎があるのを感じただけ。

あれから、1週間。その後の俺には、何も感じなかったが、今では感じる。この命の炎で世界は変わる。初めてそれを使ったのは、同窓会のときである。かつて中学の時にひどく虐められていた私だった。彼らはその時のことは正真正銘謝っていて、もうその話は終わったはずだった。でも、私は違う。未だに、奴らを許してなどいない。そこで、私は腕に少しばかりの力みを加えてしまった。そうしたら、腕から青い炎が出てきた。周囲の人間は、この状況は見えてないらしい。その炎が、いじめっ子の主犯に襲いかかる。そうすると、奴は倒れた。周囲は悲鳴のオンパレード、私は狂気の笑みを浮かべ、心の中で大笑い。私は悟った。これなら、新世界を創り出せる。某死のノートを手に入れた主人公よりも素晴らしい世の中へ創り変える。今、夜の風が追い風となって私を押してくれる。もう引き下がれない。私は奴らにを見せつけてやる!!



それから数年後の月日が流れた。あの時に目標を定めたが、未だ実行に至ってない。つまりまだ私の存在に気づいてない。あれからちょこちょこ何人かは裁きの鉄槌を下していたが、まあ気づかないだろうとたかを括っていた。私は今までサボってきたわけでない。準備を念入りにしていたのだ。動画無料アプリ、MeTubeにて私の生き様を見せつけてやる、その時まで準備を念入りに...

しかし、そんな準備もあっけなく終わってしまう。警察が来たのだ。私は以前この近くで裁いた女性がいた。その時に私は失態をしてしまった。監視カメラに映っていたのだ。それで警察が私の元へ来たというわけだ。でも、そろそろ始めようかと思っていた矢先の出来事であったため、青い炎を纏い、奴らを裁いた。邪魔者は容赦無く、滅する。少し早くなってしまうが、始めよう。

MeTubeを使い、某交差点の電光掲示板をハイジャックした。そこで、私は宣言する。

”この世界に悪のない世界を創り出す、私を邪魔する者は悪とみなす、悪は滅するべしである。”

世の中は混沌とあらゆる考えで包まれた。おそらくここの政府は私を捕獲しようとするだろう、じきにこの場所はバレる。ここに自衛隊やらなんやらが来るだろうと思っていた。案の定、身と現在の位置がバレた。

春堂夜風 27歳 (無職)

そして、ヘリの音がした。そこから銃口が見える。私を殺そうとしてるみたいだ。そこは予想違いだったが、そんなの関係ない。私は腕に青い炎を纏い、奴らのヘリを覆い尽くした。もちろん、奴らは滅された。私の手によって...しかし、私は急に倦怠感を抱く。腕の方に以前はなかった、3という数字。私はそんなの関係なく外に出た。そこに待ち構えていた。3人の刑事...私は奴らと同様に青い炎を纏わせ、滅した。腕の数字が0に変わる。その時、私は頭に恐ろしい走馬灯が浮かぶ。今まで滅してきた人間の憎悪やら苛立ちであった。私は頭を抱え、絶望の叫びをした。私が今まで犯してきたことは単なる復讐に過ぎなかったこと、そう悟った。私は私の幸せのために、動いてきたつもり...だが、その行動はいずれも私をいじめてきた奴らと同様であった。真なる現実を突きつけられたのは、世間ではない、いじめっ子でもない、警察や自衛隊でもない。紛れもなく、私だった。

そして、私は灰となった。彼が天国へ向かったのか地獄へ堕ちたのか、はたまた転生して、虫へなったのか一切わからない。一つわかることは、”命の炎”によって灰になったことだけ...

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怒り アカサ・クジィーラ @Kujirra

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