第71話精神操作魔法

ニタフィーいわく精神操作魔法とは、相手の今の感情を消して、自分に都合のいい感情を上書きするものらしい。

相手を混乱させる『混乱コンフューズ』や眠らせる『睡眠スリープ』等がそれにあたる。

ニタフィーが作った特殊魔法は、今の感情を強くさせる『増幅アンプ』だ。

使い方はかんたん。ニタフィーが気に入った女子に良いことをして、好意を持たせる。僕が『増幅アンプ』を使い、その好意を増幅させるというシンプルな方法だ。

ーー僕たちは実際に女子に魔法を使って効果を確かめている。しかし、なかなか上手くいかない。


ーー


「やぁ、これはキミのハンカチかい?」

ニタフィーが女子の落とし物を拾ってあげた。


増幅アンプ!」

僕はすかさず呪文を唱える。


「う、ごめんなさい。そのハンカチ、触りたくないから捨ててくれる?」

女子は逃げるようにして去っていった。


「おかしいなぁ? 理論上うまくいくはずなのに。」

先ほどから何人にも試しているが、好意が増幅しているように見えない。むしろどんどん嫌われていっているように見えるのだ。


「すまないニタフィーくん。もっと練習して必ず成功させるよ。」

ーー


「あなたたちですわね? 女の子たちにいたずらして困らせているのは!」

エリザベスさんが現れた。



「エ、エリザベスさま! 誤解です! 僕たちはみんなと仲良くなりたくて。今のも落としものを……」

ニタフィーくんがエリザベスさんにかしこまっている。


「お黙りなさい! 言い訳は必要ありません。今後は一切女子に近づかないで頂けます?」


「そ、そんなぁ……」


「またあなたですの? まったくいつもいつも……。親の顔がみてみたいわね!」

エリザベスさんが僕に向かって言った。


「はは、ムスコはありますけど親は居ませんよ。千年前に生き別れましたから。」


「噂の女がいるでしょう? たしかマァムとか言ったかしら? あなたの保護者じゃなくて?」


「まあそうなりますかね? マァムさんにはお世話になってますから。」


「言っておきますけど、わたくしの力があればその女を社会的にまっ殺することだってできますのよ? あなたもこっちの薄汚い男のように畏まりなさい。」


「あ? 殺すぞ?」

僕はどす黒い魔力を圧縮し、ザベスさんに放った。

ーー精神崩壊させてやる。

闇の魔力がザベスさんの記憶をぐちゃぐちゃにしていく。


「いやぁああああっ!」

ザベスさんが頭を抱えてしゃがみこんだ。


「ダイくん! やめるんだ! 王女様に手を出すと、おまえもただじゃ済まないぞ!!」


「こいつが悪いんだ。マァムさんに仇なすやつは一匹残らず始末してやる!」

ーーさすが学年二位というだけのことはある。高い魔法耐性を持っているようだ。僕の魔力には耐えきる事が出来ないが。


「ごめんね……みんな……。」

そう言い残し、ザベスさんが倒れた。


「ふんっ。殺されなかっただけありがたいと思うんだな!」


ーー


「こ、ここは? どこですの?」


「気がつかれましたか? 良かった……。」


「レーズンさんにビアンカさん。わたくしに何があったんですの?」


「また、あの男です。あの男がエリザベス様に怪しげな魔法を使ったんです! お体に異状は有りませんか?」

ーー思い出しましたわ! あのダイ様に魔法を使われて、急に頭痛がしたかと思ったら、記憶が走馬灯のようによみがえって来て……そこからはわかりませんわ。


「また、ダイ様に負けてしまいましたのね……。なんてお強いのでしょう。これでは服従したくなってしまいますわ。」


「え!? 」


「どうされたのです? エリザベスさま。そうだわ! ビアンカさん、今日はわたしたちがエリザベスさまにご奉仕さしあげましょう?」


「いいわね、レーズンさん。エリザベスさまは横になっていて下さい。私たちが気持ちよくして差し上げます。」

レーズンとビアンカがエリザベスの左右につき、それぞれ方胸ずつ揉みしだき始めた。


「やめて下さいまし!」


「申し訳ありません! 痛かったですか?」


「違いますわ! この体はダイ様のもの。あなたたちが簡単に触れていいものではありませんわ!」


「え? どういうこと、ですか?」


「そのままの意味です。わたしに気安く触らないで下さいまし! 汚らわしい!」

ーー女どうしであんなことするなんて……あり得ませんわ! 早くダイ様にキレイにしてもらわないと。


エリザベスはダイの元に急いだ。

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