第53話人型魔獣

「ん……おはようございます……」


「おはようございます。ダイさん、良く眠れましたか?」

目が覚めて一番にマァムさんの笑顔がみられるなんて、幸せだ。


「はい! ありがとうございました!」


「お互い様です。ご飯を食べたら、どうするか話し合いましょう。」

僕たちは缶詰めを食べた。

倉庫の食糧はまだまだある。

お腹いっぱい食べたとしても一ヶ月は持ちそうだ。


ーー


「先に進まない事にはどうすることも出来ないですよね。」

僕がマァムさんに言う。

このままここにいても助けが来る事は無いだろう。

来たところで一緒に閉じ込められて終わりだ。


「そうですね。ちょっとずつ、外の森を探索してみましょうか。」

方針は決まった。

まずは施設周辺の探索だ。

この周辺を中心に探索範囲を拡げて行く。

何もなければまた考えればいい。

まずはそこまでやってみよう。


ーー


「なかなか、うまく進めませんね!」


「ええ。どこから敵が襲って来るかわかりません。気を付けて下さい。」

僕たちは施設に沿って森を探索している。

草木が茂っていて思うように前に進めない。

しばらく進むとコンクリートの壁があった。

上を見ると天高く壁が伸びていて、先が見えない。

とてつもない高さのため天井を確認出来ないのか、魔法か何かの力なのか、はたまたそのどちらもなのか。

上に行くにはエレベーターに乗るしかないだろう。

僕たちは一度施設に戻り食事をし、予定通り探索範囲を拡げて行く事にした。


ーー「やっと普通に歩けそうです。」

出入口からまっすぐ進むと、獣道に出た。


「道があるということは、なにものかが通ったということです。気を付けましょう。」

僕たちは歩いて来た方にある木に布を巻き付け目印にした。

そこから獣道を歩いて行く。


ガサッ!


道の端から何者かの気配がある。

僕たちは戦闘準備をする。


「ガアァッ!」

道の右側の草むらからマァムさん目掛けて敵が襲って来た。


キィン!


僕はすかさずマァムさんの前に出て攻撃を防ぐ。


「なんだこいつ!?」

敵を確認すると、毛むくじゃらの人間のようだ。

原始人と言うべきか。剣というにはお粗末な金属製の鋭い棒を握っている。



「エアーカッター!」

マァムさんが風属性の魔法を唱える。

敵に切り傷が出来ていくが、致命傷にはならない。



「うりゃっ!」

僕が斬りかかると、敵は飛び退きそのまま逃げて行った。


「はあっ……はあっ……」


「ダイさん、怪我はありませんか?」


「大丈夫です。今の、人でしたよね?」


「わかりません。人型の魔獣かも知れませんし……」

魔獣といってもゴブリンのような見た目が人に近いものもいる。

人語を操る者とそうでない者で区別する他ない。

とりあえず敵が居ることだけは確かだ。


「もう少し先に進んだら戻りますか。」


「はい。」


ーー


僕たちはまた施設に戻ってきた。

人型の魔獣がいることがわかったので、出入口に机を重ねてバリケードを作った。

もしかしたら居場所を特定されているかもしれないからだ。

遺跡に入ってから、どれだけ時間が経ったかはわからない。

ずっと明るいので時間の感覚がわからなくなってしまったのだ。

仕方ないので腹が空いたら食事をして眠くなったら寝る。そうする他ない。


今は隣でマァムさんが寝ている。


「すっ……ふっ……ぅく……」

僕はマァムさんの髪の匂いを嗅ぎながらオナっている。

しばらく風呂に入っていないため、汗の匂いが強くなってきている。

うん、いい感じに熟成されてきているな。

あとニ、三日もすれば完璧だ。


ドピュルルルッ!


「……ふぅ。」

気持ち良かった。

マァムさんに感謝の気持ちを込め、両手を組んでお祈りした。

最後にガチ恋しないよう自分に言い聞かせ、今日の日課は終了である。


「うん……おはようございます。」

日課が終わって少ししてマァムさんが起きてきた。


「おはようございます。それでは僕も寝ます。お願いします。」


「はい。お休みなさい。」



ーー「すぅ……すぅ……」


「はぁ……おふろに入りたいです……」




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