ビギナーズラックは続くよ、どこまでもッ!!
@WaTtle
LV0 エッジ
VRMMORPG【X DRIVERS】好評発売中ッ!
との宣伝文句が謳われているものの、実際はそれを遊ぶためのハード【Brain Dancer】はどのバージョンでも売り切れ状態。ゲームを多くダウンロードできる大容量バージョンも、映像作品も観られるバージョンも。機能的に、後者の方が人気を主に人気を博しているのだが、抽選漏れなどで買えない人にとっては苦痛であろう。
これは無理もないことだと思う。ラノベやそれを主に原作にしたアニメやゲームが原因でVRMMOは、どの国もそれの実現に技術力を割いていた。それも俺たちの世代が生まれる前からだ。
そして去年になって、やっとその技術が現実のものとなっていた。本当にゲーム世界に入れる、と言うから、ゲーム好きはもちろん、コンピュータ技術者も関心を抱いていた。
実際、予約開始となった瞬間、すぐにサイトがパンクし、しばらくしてどこも予約を締め切っていた。だから実際に持っている者はまだ少ない。生産も頑張っているらしいが、追いつくのにどれくらいかかるかわからない。
なんで、こんな話をしているかって? そりゃあ――。
「母さーん。おやすみッ!」
「宿題は? 勉強はしてるんでしょうね?」
「それなら、俺の答案見てみろ。文句ないでしょ」
「本当。点数はいいわね」
「だから、いいだろ?」
母に答案の点数を凝視している中で、風呂上がりの兄さんが頭をタオルで拭きながら母さんに言った。
「しょうがないだろ、母さん。こいつ、そのために勉強してるようなもんだろ?」
「わかってるね。兄さん」
はぁ、と溜め息を吐く母さんが注意してきた。
「いいけど、あまり没頭しすぎないでね」
「うん、わかってるよッ! 兄さんもおやすみッ!」
「おやすみ……何時間やるのか知らないけどな」
兄さんが呆れながら自室へ向かう俺を見送った。
そう、俺は持っているのだ。その【Brain Dancer】を、そして人気を博している【X DRIVERS】も。
「よし、今日もレベルを上げるぞッ!」
俺は頭に【Brain Dancer】略してブレダンを頭に装着し、VR世界に意識を移っていく。
そう、俺は幸運にも初日からブレダンを手にした男の一人だ。
【X DRIVERS】の世界観ははっきり言って剣と銃と魔法の世界。今までのMMORPGとは大きく変わらないが、VR世界だからこその特別スキル【ドライブ】がある。今までのMMORPGでは不可能だった、プレイヤースキルを付け加えるものである。
例を挙げるなら、俺のドライブ【神雷(かみいかずち)】を紹介しよう。
ちょうどそれを実践する対象の狼二匹が目の前に颯爽と現れた。
この時、今までのMMORPGだったらダメージを受ける場面だっただろう。
しかし、俺のドライブ【神雷】は、狼たちの攻撃を遅らせるどころか、木の枝から離れた木の葉さえも、ゆっくりと落ちているのだ。
つまり、今この時は俺が高速化しているのだ。ドライブは現実世界で例えるなら、超能力と言って差し支えないものになっているのだ。
俺は襲い掛かる二頭の狼を二刀の小太刀で斬り刻んでいく。あっという間に、狼たちのHPゲージが無くなっていき、気づけば、ドライブの効果が切れていく。すると、さっきまで襲い掛かっていた狼たちは光となって消えていき、木の葉も普通にひらひらと地面に落ちた。
まあ、俺はそんなもんに頼らなくたって――。
茂みから一匹の狼が襲い掛かってきた。それを俺が咄嗟に小太刀を投擲した。小太刀が頭部に突き刺さり、クリティカルヒットで狼は一撃で光となって消え、小太刀が落下していく。
持ち前の反射神経でどうにかなってしまうんだけどな。
ドライブの効果時間にはクールタイムがあるが、自前のプレイヤースキルは無限なんだよな。
このドライブが、人が熱中するきっかけの一つでもある。ある者は剛腕の一撃を放ち、ある者はHPを回復しながら行動、またある者は絶対カウンターを持っていたりなど他にも多くのドライブが存在する。人々は自分とかけ離れたプレイヤー(自分)を意のままに動かしていく。
あと、MMORPGと同じく、多くの【職業】が存在する。
俺の職業は【忍者】である。忍者のステータスの割り振りはこんな感じだ。
〈STR〉C 〈VIT〉E 〈INT〉B 〈AGI〉S 〈DEX〉S 〈LUC〉C
VIT(防御力)がかなり低く、STR(攻撃力)とINT(知力)とLUC(幸運)がお世辞にも高いとは言えない。AGI(俊敏)とDEX(技量)がこの忍者の売りなのだ。
最悪、防御面は防具で補えるし、攻撃面でも武器やスキルで補える……選んだ時はそう思っていた。結局のところ、攻撃面は物理と魔法は狙い通り武器とスキルで上げることはできたのだが、防御面はほとんどの装備がAGIを犠牲にしたもので、なんとか選べた防具ではVITが上がらず、AGIが上がる防具を選んだのだ。それでも、中途半端にVITが上がる防具よりはマシだと思っている。
それでも、なんで忍者という職業を選んだのか、自分のプレイスタイルに合ったから、というのは否定しない。転職だってできるのだが、この【忍者】という職業。実は今現在、俺にしかないと思われるレア職業だ。与えられたドライブも同じくレアなものだ。
実際、メーカーの公式サイト、ユーザーによる攻略サイトを見ても、【忍者】と【神雷】も載っていなかった。サービスが開始してから一週間、なによりまだユーザーに広まってないのも一因だが、どこを探しても、二つのことが載ってなかった。
ドライブは自動付与によるものだからともかく、職業選択は自分で選べるのだ。俺はその中でポツンと載っていた忍者を選んだのだ。自分の意志で。
その疑問は未だに抱いたままだが、与えられたドライブと自分で選んだ職業だ。それで何度死亡をしても、後悔はない。むしろ、望んだ力が得られて嬉しい限りだ。さて――。
「今日もレベル上げ、やるぞーッ!」
ユーザーネーム【エッジ】、LV10、地道に頑張ってますッ!
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