世界復讐~災厄のエルフと最悪の人狼~

@kurokumanoke-ki

出会い

「はぁっ、 はぁっ、はぁっ」


大量の雨が落ちる森の中で水を含んだ土を踏む音と共に、少女の荒々しい息づかいが響く。


少女は尖った耳、体全体を覆う白い肌、琥珀色の目があり、その中でも顔半分に一際目立つ黒いアザ?を持っていた。


「うっ!」


後ろから火の玉が少女に向けて迫ってきた。

それを何とかかわすと、少女の前にあった木に玉は当たり、同時に爆風を起こし少女に当たる。


跡形もなく砕け散った木の周りには焦げ臭い匂いと激しく揺れる炎、黒い煙が立ち込めた。


少女は体勢を立て直し、再び逃げ始める。


「バカ!! 森の中で火を打つ奴があるか!」


「別に雨降ってるんだから大丈夫だろ!」


「そんな事よりも矢を放て! 魔法を放て!!必ず殺すんだ!」


少女を追っているのは少女と同じ種族の者達、エルフだった。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、……っ!!」


少女が逃げた先は、高さ百メートルはあるであろう崖だった。


前は落ちたら即死の崖。

後ろには自分を殺そうとする追っ手。


少女がどうするべきか考える間もなく、先程よりも速く大きい火の玉が飛んできた。


「ぐぁっ! 」


少女は避けることができず、ボンッ!! という、鈍い爆発音が起こる。


その炎と共に少女は崖下へと落下していった。


直ぐに追っ手達が崖下の少女に向かって、弓矢や火、氷、電気、様々な魔法を打つ。


「う、くっ! …… ハァァ!!」


少女は落ちながらも自身の前に魔法の壁を作る。

追っ手達が魔法を放つときとは違い、キィィィンという、空間にヒビが入るような音が響いた。

矢は壁に触れた瞬間折れ、魔法は当たった旬消えて失くなってしまった。


だが、少女は崖下に落ちていく。


その最中、追っ手の少女はリーダーと思わしき女と目が合う。


彼女らはお互いを睨み付けていた。


少女はそのまま、崖下の木に吸い込まれていった。


「うお!? ここを落ちたのか。 今頃はペシャンコになってるかね~」


「……だめだ。 ここからじゃ、死体を確認できない。 まだ、生きている可能性がある。 下にいく道を探すぞ」


リーダーと思わしき女が、険しい表情をする。


「おいおい、この高さなら確実に死んでるだろ? それよりも、この大雨だ。どこか、雨宿りできる場所で休憩しようぜ?」


「そんなことをしてる暇はない! 早く下に降りる道を探せ!」


「……はぁ、へいへいわかったよ。他のやつにも伝えてくる」


「……必ず殺してやる。 私の夢のために」


……ガサッ


「……う、痛って…」


リーダーの女の予想通り、少女はあの高さから落ちても死んでいなかった。


落ちている間、下に向かって全力で風魔法を放つことによって落下速度を下げたことにより、木に引っ掛かって止まったようだ。


「……ん? わっ!」


少女を支えていた枝は重さに耐えきれずに折れ、結局少女は地面にぶつかった。


魔法による火傷、矢に当たった時の傷、深刻なダメージが刻み込まれている体を再び持ち上げようとする。


「……クソ…」


しかし、少女にそんな体力は残っていなかった。


体がふらっと倒れ、視界がゆっくり、ゆっくりと暗くなっていく。


少女が気を失う寸前、男の声が聞こえた。


「エルフの……女の子?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る