Wkumo

もうだめだと思った、けれど終わらない

 足がたくさん並んでいる。


 覚めたと思った夢だった。

 たくさんの裸足の足がそこに並んでいて、足、足、足しか見えない。

 その足たちがざわざわと騒いで、ざわざわと叫んで、足、足、足。足が走っていた、足が跳んでいた、足が泳いでいた。

 そんな中、俺は一人で、耳を塞いでそれを見ていた。

 いや、「見させられていた」。


 足から逃げることはできない、何と言ってもあれは足、足と言えば速さの化身、速さの化身に速さで勝つことはできず、逃げることもできず、俺は足ではないから仲間にも入れない。


 足は遠くまで駆けて、俺の部屋にも入ってきた。

 カツカツという音。裸足のはずなのにどうしてそんな音がするのだろう?


 夢と現実の境目がわからない。俺の部屋にまで足が来ているのだから。

 こんな足は悪夢の中だけにしてほしいし、実際そうだった、そのはずだった。

 けれど追ってくる。逃げても隠れても追ってくる。足から逃げることはできなかった。

 足には意思がない、思考もきっとない。そのはず。足には頭がないから、自分の頭で考えることができないから、足は走っているだけ、何も考えずに叫んでいるだけで、足は悪くない。そう、誰も悪くはないんだ。きっと。そのはず。そのはずなのに。


 俺は頭が狂ってしまったから足が黒く見える。濁って見える。足が悪意をはらんでいるように見える。

 こんなのは狂気だ、おかしいんだ、間違っている。だけど世界はおかしくなんかない、全て正しくて、間違っているのは俺の方なんだ。おかしいのは俺の方。だってこれまでずっとそうだったし、世界は正しかった、そうだろう。

 けれども足は濁っている。

 おかしい。おかしい。こんなのはおかしい。


 逃げることはできない。

 だから俺は足を、



 何も変わりはしなかった。

 足は変わらず俺を「見ていて」、叫んだり跳んだり走ったりしている。

 足は。

 足は。

 足は。


 俺はたぶん、足が嫌いなんだろう。




 叫び声はまだ、響いている。

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