わたしたちは、はんぶんこ。

パら

【1】 出会い


朝、登校すると下駄箱には上履きの代わりにゴミが詰められ、机の上には罵詈雑言が描かれていた。


別に今に始まったことではない。


犯人は粗方見当がついている。


だが、ここでそれを糾弾して騒ぎを大きくすることは全くの愚策だ。


耐えればいい。

そう。耐えれば……。



 泣きそうな、それでいて強い覚悟を決めた目で屋上に入ってきた隠岐おき 千幸ちゆきは、手に持っていた黒く禍々しい本をドンと置き、パラパラとページをめくった。


ボロボロの表紙にはかすれた文字で、


鬼呪術きじゅじゅつきん


とだけある。


そしてページをめくる千幸の手が止まった。

どうやらそこには「あること」の手順が書かれているようだ。


 図解などは一切無いから、文字だけを読みながら右手と左手を複雑に絡ませ、小さく今にも消えてしまいそうな声で呪文を唱える。


かと思えば、向いている方向を180度変えて、さらに複雑に手を絡ませ、再び呪文を唱える。



 最後の一文字を唱え終えた、その時。



リーン、と鈴のような音が鳴って、ソイツは現れた。

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