悪役令嬢がヒロインルートに入ったので、私は退場させていただきます

睦月 はる

ヒロインに転生しました

不運な事故で死んで、乙女ゲームの世界に転生するってよくあるよね!




 高校の下校中に駅のエスカレーターから転落し、私はあっさり死亡した。




 そして気付いたら、世間で話題の乙女ゲーム『恋する貴公子達』の世界に転生していた。ヒロインとして。




 これ見た。ネット小説で散々読んだ。


 ヒロインに生まれ変わったから推しキャラとイチャイチャ出来るわ!


だがしかし、同様に転生していた悪役令嬢が、断罪回避のため前世の知識でチート無双して、推しキャラ達に愛されて、逆にヒロインが驕り昂って断罪されるヤツだと。




 確認の為にゲームの舞台となる学園を覗いてみたら、悪役令嬢と、本来ならとっくに辟易している筈の婚約者の王子が、仲良く寄り添っていたし。なんなら、騎士団長の息子、宰相令息、悪役令嬢の義弟とも仲睦まじくしていた。




 もうオワタ。私の入る余地ないじゃん。何の為に生まれ変わったの?悪役令嬢が幸せになる為の踏み台?




 本当なら学園にも入学したくなかったが、前世の記憶を思い出す前に、可愛くて賢くて健気で天使なリナちゃんとして、有名になってしまった私は、国民の教育環境の見直し及び改善の試金石と言う、国のプロパガンダに利用される事が決定していた。




 そして有無を言わせず、私は編入生としてフランク学園へ入学するのだった。








 ヒロインのリナが学園に編入した。


 わたくし、悪役令嬢アウリス・デ・ラマルティーヌ公爵令嬢を、断頭台へと送るヒロインが。




 素直で天真爛漫で、桃色の髪に青空色の瞳、体は小柄で華奢なリナ。


婚約者である王子は瞬く間に彼女に恋に落ちる。義弟も自分をいじめる義姉をあっさり捨てる。幼馴染の騎士団長の息子も、同じ家庭教師を師事する宰相令息も、可愛らしいリナに恋をするのだ。




 菫色の髪と同じ色の吊り上がった瞳、肉感的な体を持つわたくしとは大違い。


愛される為に生れてきたリナに、悪役令嬢のアウリスが太刀打ちできる筈がなかった。


 そして醜い嫉妬心を燃やし、彼女に牙を剥くのだ。




 このまま行くとわたくしは、王子の恋人を害したとして、斬首刑の未来が待っている。他の攻略対象者でも同じ様な結末で、良くても国外追放だ。




 勿論リナをどうこうしようなんて思っていない。王子達とは良き友人関係を築いてきたと思っているし、家族や使用人達とは、強い信頼関係があると信じている。




 リナが誰を選ぼうともわたくしは邪魔をしたりしないし、協力するのも吝かでない。




 物語の強制力がどこまで有効なのか分からないけれど、わたくしは絶対に、悪役令嬢になったりしない。




 この乙女ゲームの世界で、平和に平穏に生きて行くんだ…!








 「あなた庶民の癖に殿下に近付くなんてどういうつもり!」


 「それに、そのご友人達にも色目を使っているそうじゃない!」


 「貧乏人が高貴な方々に擦り寄って、一体どう言うつもりでしょう。ああ恐ろしい!」




 編入して僅かに一週間。私は悪役令嬢の取り巻き(仮)に絡まれていた。




 (仮)なのはゲームで彼女達は、悪役令嬢の手となり足となりお囃子となり、リナの何もかもが気に入らなくて、悪役令嬢と共にいじめを繰り返す。


 しかし現在の悪役令嬢は、婚約者達と仲睦まじく学園生活を送っており、いじめ何てちんけな事には素振りさえ見せていない。




 「殿下方とは一度しかお会いした事がありません。困っていた所を偶々助けて頂いただけです」




 王子は迷子になっていた所を助けられ、悪役令嬢の義弟には落とし物を拾って貰い、騎士団長の息子には、庶民出身を揶揄されていた所を助けられ、宰相令息には図書室で偶然鉢合わせた。




 何と言うヒロイン力。全く狙ってないのに、悉く攻略対象者達とイベントが発生している。



 しかも全現場を悪役令嬢に見られている。


その度に『困っていた彼女を助けただけだ!』と、浮気男みたいな言い訳をする攻略対象者達。悪役令嬢は『やっぱりあなた達は惹かれ合う運命なのね…』的な、悲しそうな顔をして無言で去って行く。それを追い駆ける攻略対象者。取り残される私。




…もうよそでやってくれ。




 「嘘を仰い!殿下はアウリス様の婚約者なのよ!お前みたいな下賤な者が近付く何て汚らわしい!」


 「アウリス様程、国母に相応しいお方はいないわ!画期的な発明で医療水準を向上させて、国内外に名を轟かせたのよ!」


 「更に長年犬猿の仲だった隣国との関係を改善させ、来年度の皇太子殿下の留学まで成し遂げたのよ!」




 ええ~…、悪役令嬢めっちゃチートしてるじゃん。絶対転生者じゃん。ゲームと前世の知識活かして、断罪回避に勤しんでんじゃん。




 取り巻き(仮)が聞いても無いのに色々教えてくれたので、悪役令嬢の状況が大まかに把握できた。




 王子を筆頭に完全に攻略されている。間違っても、断罪される事はないだろう。


 しかも隣国の皇太子って、続編のメイン攻略対象者じゃん。進捗順調すぎない?オーバーワークじゃない?




 リナが違う方向で泣きたくなっていると、近くの茂みから物音がした。


 嫌な予感がする…。これまでの経験上、あの人が…でた~!




 困惑の表情を浮かべた悪役令嬢アウリスだった。




 偶然通りかかっていじめを目撃して、ヒロインは天敵だと知りながらも黙って見ていられなくて、義憤に駆られて出てきてしまった悪役令嬢様や~!(予想だけど多分あってる)




 「あなた方、これは一体何の騒ぎですの?」




 「ちっ違うのですアウリス様!わたくし達はこの無礼な小娘に一言注意を…!」


 「アウリス様のご威光が理解出来ない小娘に、教育的指導を…!」


 「全部この小娘が悪いのです!身分を弁えないこの小娘が…!」




 何で一斉に一話目で消える、モブ悪役みたいな言い訳するの?と言うか、小娘言うなや。私が小娘ならあんたらも小娘だからね!




 「三人で詰問する必要がありまして?こんな人気の無い所に呼び出して。わたくし同級生の方達が、誤解を受ける様な事をなさっていたら…、悲しいですわ…」




 はふうと、片手を頬にあてて嘆息を吐く。エロい。片腕は心細い自分を支えてるかの様に胴体に。腕に胸が乗っている。デカい。




 取り巻き(仮)達は言い訳ばかり繰り返し、悪役令嬢は取り巻き(仮)達に、私への謝罪を求めている。


 もういいよ。私の事は放置していてくれ…。




 その時、再び茂みから物音が。


 何だ今度はと、うんざりしながら音の方向を見やると、あらまあ何と言う事でしょう。王子様とその他、攻略者様ご一行がこんにちは!




 てっ、なんでやねん!




 あんた達、この国でも指折りの大貴族じゃないの⁈何でそれがデフォルトかの様に出て来るの⁈




 「アウリスこんな所にいたのか、探したぞ」


 「殿下…。それに皆も…」


 「姉さん何をしているんです?」


 「アウリス嬢、そのお嬢様方はご友人ですか?」


 「君達、一人の令嬢を囲って何をしてるんだ?」




 悪役令嬢の義弟、宰相令息、騎士団長の息子が順に尋ねてくる。




 待て待て。唯でさえ混沌としている状況を、更にカオスにするな。


ほら攻略対象者勢ぞろいで、悪役令嬢が戸惑ってるじゃないか。『ヒロインをいじめてると思われてる!やっぱり私は断罪される運命なのね…!』みたいな顔して絶望しているじゃないか。取り巻き(仮)達よ、大丈夫か息してるか?




「アウリス一体どうしたんだ。顔色が悪いぞ。こんなに震えて…。ん?そこに居るのは編入生のリナ・アボット嬢じゃないか?彼女と何か…」




 王子が私を認識した途端、もう耐えられないと、悪役令嬢はその場から駆け出した。




 「アウリス!」


 咄嗟に引き止めようとした王子の手を躱し。




 「姉さん!」


 立ち塞がった義弟を華麗に無視し。




 「アウリス嬢!」


 温室培養箱入り宰相令息はお話にならず、一秒も足止められない。




 「アウリスちゃん!」


 これは凄い!未来の近衛騎士団隊士のディフェンスを躱したぞー!何て優雅なターンだ!彼も呆然と何も掴めなかった己の手を凝視している!




あんたらそればっかりだな。悪役令嬢には、遭遇と回避のスキルが備わっているものなの?




 放心していたのは束の間。しかしその間に悪役令嬢の姿は彼方へと消えて行った。


 お嬢様なのに健脚すぎる。前世は陸上部だったのかな~。




 王子達は現実逃避するリナを放置して、慌ててその後を追って行った。




 はっ待て。人生詰んだと嘆いて崩れ落ちている、この取り巻き(仮)回収どうするの?


ちょっと、責任取って持って帰ってよ~!






     ※※※※






 「リナ・アボット。君をここに断罪する!」




 どうしてこうなったと、私は立ち尽くす。




 定期的に行われる学年集会。教師の話も終わり、ではお開き…と言うタイミングで、第一王子が壇上に現れ、戸惑う生徒達を前にそう宣言した。




 私の周囲からは、あっと言う間に人が居なくなり、スポットライトが当たっているかの如く、ぽっかりと取り残される。




 その台詞は、この場面は、リナの名前以外は、悪役令嬢が断罪されるシーンのそれだった。




 どうして。私は最初の一回以外、直接王子達と話した事すら無い。『ヒロインらしく、攻略対象者と結ばれる為、邪魔な悪役令嬢を排除する』と言う、逆断罪ルートは徹底的に避けた筈だ。




 取り巻き(仮)に追及された時も、悪役令嬢と直接会話すらしていないし、まともに顔を合わせたのはあれが最初で最後だ。




 王子の他にも、悪役令嬢の義弟、宰相令息、騎士団長の息子も揃って、リナを壇上から冷たい目で見下ろしている。




 「何の、こと、ですか…」


 「白を切る気か。君が編入してからというもの、学園が動乱の渦中の様な有様だ。アウリスは君を見る度に怯えている。公爵令嬢の彼女が、庶民の君に怯える何てあり得ないだろう?聞けば、高貴な男性と縁組を狙って、アウリスに圧力をかけていたそうだね。『特別に許された編入生』の意味を履き違えてないかな?それは礼儀を無視して好き勝手しても良い、という事ではないんだよ?」




 「姉さんはあんたと違って、未来の王妃となる人なんだぞ!それを知っての行いか?国家反逆罪を疑われたって、文句は言えないぞ!」




 「貴女の編入は、国家プロジェクトの一環というのを忘れていませんか?我が父、宰相閣下から直々に言明された事、忘れたとは言わせません」




 「身分云々関係無く、人として許せない行動だ!騎士道を志す者として、君を許す事は断固として出来ない!リナ・アボット、罪を受け入れて処罰されたまえ!」




 私の言い分を聞かずに、言いたい事を言って満足気する王子達。そろそろ堪忍袋の緒が切れそうだ。切っていいよね?よ~しぶった切る!




 「殿下!それに皆も…!」


 「アウリス。やっと君を恐怖のどん底に突き落とす毒婦を成敗できるよ」


 「誤解ですわ殿下!わたくしは彼女に何もされていません!」


 「だったらどうして彼女を見かける度に怯えて、『殿下がいつ婚約破棄を申し出ても、わたくしは覚悟が出来ております』何て言うんだい?そう言う様に脅されていたんだろ?」


 「違う…、違うの…!」




 おい悪役令嬢。突然登場したと思ったら、いきなり痴話喧嘩すな。王子達は、こんな時でさえ悪者を庇える君は、まるで聖女の様だ…と、うっとりした瞳で見つめてるな!




 アウリスは涙を浮かべながらリナを振り返った。何か言おうとして、でも恐怖に震えて縮こまる。




 「この期に及んでまだアウリスを追い詰めるのか!学園追放では生ぬるい。いっそ極刑に…」


 「喜劇はもういいです」




 冷淡な声が自分に向けられたとは思わず、王子は更に誰かが加わったかと、辺りを見渡した。


 しかしそこに居たのは、遠巻きにされ奇異の視線を浴びるリナだけだった。




 「喜劇だと…。貴様苦しむアウリスの姿を楽しんでいるというのか⁈何処まで性根が腐って…」


 「いや、愉快なのは圧倒的に殿下達です」


 「なっ何だと⁈」


 「そもそもの根幹が間違っているのに、同じ展開を何度も見せられたら、飽きてくるんですよ。天丼は精々二回までにしておいた方が良いですよ」




 リナ以外の全員が絶句して、何が起きているか理解に苦しんでいる。あと天丼って、何だと。


 王族に対する不遜な物言い、自身が断罪されている側なのに、愚者はお前達の方だと言いたげな態度。彼らは、異星人と対峙しているかのような心地になった。




 「リナ・アボット!殿下に対して不敬であるぞ!今すぐ謝罪したまえ!」


 「ああ、宰相閣下の…。そもそも私リナ・アボットじゃないですし」


 「は?突拍子も無い事を言って、場を混乱させようとしても無駄だぞ」


 「違います。私リナ・キュリーです。結婚したので」




 そう私キュリー夫人なの。




 「は…?」


 「編入前に入籍したんです。学業と家庭の両立は無理だと、宰相閣下にお話して編入辞退を申し出ましたが、もう決まった事だからと、旧姓のまま通う事を強いられました」




 別に苦肉の策では無い。


幼馴染のジャックが、「高貴な連中に惹かれる前に、俺の事を男として意識して欲しい」と告白してくれたのだ。


 会った事も無い話した事も無い、好きでも無い興味も無い、他の女に靡いてる男より、自分の事を一途に思う、幼馴染に惚れるのは自然でしょ?




 貴族は婚約発表・開示期間があって、最低でも一年は入籍までに時間が掛かるが、庶民にはそんなもの無い。


 気持ちが盛に盛り上がった私は、即両親から結婚の承諾を取り、即ジャックを教会に引き摺って行った。


 ジャックは若干呆れていたが、惚れた弱みなのか何も言わず(超絶嬉しい)、告白した日に結婚すると言う荒業を受け入れてくれた(超スキ結婚しよ。あっ、今したわ!)




 「在学中に入籍何てあり得ない…」




 まあ学園は、より良い結婚相手を探すお見合い会場みたいな意味もあるしね。結婚=仕事みたいな認識の貴族には、お互いの気持ちで結婚する庶民の考えは、とんと理解出来ないのだろう。




 「ついでに言うなら、国王陛下もご存じの筈ですよね?なんせ名誉学園長ですから」




 異例中も異例の庶民のフランク学園編入。しかも国策である。国王が私の身上を知らない筈が無い。結婚の事実も。




 自分達の都合の為に、逆らえないのを良い事に庶民を利用する。しかも既婚の事実を隠されて。どっちが『悪』なんだか。




 喜劇の役者達も、事態は理解出来たらしい。


宰相令息は、自分の父親の卑怯な振る舞いに肩を震わせ、王子はまだ受け入れたくないのと、父への猜疑心で表情を曇らせた。




 「お前が、俺達に媚びて来たのは…」


 「ラマルティーヌ令息様。何度も言いますが、その事実はありません。編入自体嫌だったのに、媚びもへったくれもないでしょう?」




 学習能力の無いお坊ちゃまに、諭す様に優しく言ってやると、子供扱いされて屈辱なのか、赤面して震えている。




 「富と権力を目の前にして、夫から乗り換えるつもりだった…」


 「はあ?脳みそまで筋肉になった?だったらそもそも結婚せずに、黙って編入すればいい話でしょ?私が新婚早々浮気する女だと言いたいの?騎士道の必修科目に『良心』ってないんですかぁ?」




 私の不貞を疑った色ボケ騎士見習いを睨み付けると、デカイ体を竦ませて固まっている。




 もう宜しいでしょうかと締め括ると、場は静寂に包まれた。大勢の人間がいる筈なのに、衣擦れの音すら罪であるかの様に、誰一人物音を発さない。




攻略対象者達は、女性からこんな仕打ちをされた事など人生初なのだろう、許容範囲を越えたのか完全に沈黙している。


何も反応がない、ただの脱け殻のようだ。




 そうだ、肝心な事を言い忘れた。




 「公爵令嬢アウリス・デ・ラマルティーヌ様」




 婚約者達の暴挙、からの威信暴落を目の当たりにして、脳が麻痺してしまったのか、アウリスは機械仕掛けの人形の如く、ぎこちなく反応した。




 「は、い…」


 「そもそもあなたが、徒に私を意識して怖がったのが原因ですよ。一体何が不安だったんです?」


 「わたくしは…」


 「悪役令嬢だから婚約破棄されて、断罪されると?それを防ぐ為に努力して来たんじゃないの?あなたは自分の努力も、自分を愛する殿下達の気持ちも、踏みにじったって、どうして気付かないのよ?」




 はっとアウリスが目を見張った。




 「リナ…あなた…」




 問いには答えず、私は壇上のアウリスや攻略対象者達を一瞥して、更に周囲の生徒達を見回してにっこり微笑んだ。




 「では私はここでお暇させていただきますね。後はこの物語の主人公達にお任せします」




 制服のスカートを摘まみ上げ、極上のヒロインスマイルを花開かせ、私は学園を去ったのだった。




 乙女ゲームの舞台であるフランク学園に、主役である『リナ・アボット』が現れなかった時点で、この物語はリナの手から離れていたのだ。




 アウリスは『悪役令嬢』である自分に向き合っている様で、『ヒロイン』から逃げ続けて現実を見ていなかった。




 全て杞憂だった事にもっと早くに気付いていれば、只幸せな日常を送れていたのに。






     ※※※※






 「リナ、言われた通り迎えに来たけど、まだ授業の時間じゃないのか?」


 「ジャック!来てくれたのね!さすがお貴族様の使う伝令、仕事が早いわ!」


 「なあ何があったんだよ?物々しい上に場違い過ぎて、俺昼飯吐きそうだ」


 「吐いたら私が幾らでも作ってあげるわ!これからは、主婦業に専念出来るだろうからね!」


 「まず、吐かせないようにしてくれないの?専念て学園は?」


 「こんな所熨斗付きの退学届け出して、さっさと出てってやるわよ!私はキュリー夫人するのに忙しいの。歴史に名は残さないけど、夫に愛され愛する良き妻として、ご近所に名を轟かせるの!子供は子孫を含めて百十八人よ!」




 腕に抱き付いて楽しそうにする妻を見て、何かやらかしたなと察したが、ややこしそうな気配がしたので、ジャックは聞かない事にした。知らなければ、何もなかった事にしていいのだ。うん、そうだ。きっとそうだ。




 それに、妻が笑顔で幸せそうにして、側にいてくれる。


 これ以上の幸福は、自分一人では受け止めきれないので、早く家族を増やして対応しなくては。忙しくなるぞ。






 乙女ゲームのヒロインリナは、夫と共に幸せに包まれながら、物語から退場して行ったのだった。


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