第2話 助けて

「えっ?」

今度は、先程のように表情に出ているだけではなく声までしっかりと出ている。

「お前が、俺にいったんじゃないのか。パートナーになれって」

「たしかに、そういったけど言ったけど……」

ヘルが再び、煮え切らない返事をする。

「≪祭典≫に書かれていることは絶対じゃなかったのか?」

ここで敢えて俺は、≪聖典≫の名前を出す。俺の目的は≪聖典≫からコイツを解放すること。コイツの孤独を埋め合わせる事だ。だから、これが最後だ。≪聖典≫からコイツを救うために≪聖典≫でコイツを縛り付ける。

「でも、だけど」

ヘルは自分では判断できないからか、再び≪聖典≫を開こうとする。

「させるか」

俺は≪聖典≫をヘルから奪おうと飛びかかった。

しかし、俺と≪SPES≫の幹部であるコイツでは力の差は歴然だ。

1秒もかからない内に、俺はヘルに取り押さえられた。

「キミ、いつの間に」

「あいにく、俺は昔から捕まる機会が多かったからな大抵の鍵ならすぐに開けられる」

そして

「こうして、力で押さえつけられる場面も多かった」

俺は、両足でヘルを掴んで、そのまま身を翻した。

≪人造人間≫といっても、身を守るためにある程度の武術を身につけている俺が全力を出せば脱出はできるはずだ。

「なっ」

俺は、ヘルから≪聖典≫を奪い。

「一応、回収しておいてよかった」

あの時、ケルベロスに使ったライターを実は回収していたんだ。風靡さんなら、あの時のを返せとか言ってきそうだからな。

「させない!

ヘルがシエスタに使った能力を使おうとするが

「悪いな。もう遅い」

俺は≪聖典≫に向けてライターを投げつけた。

それをみるとヘルは今までとは比べものにならない力を出し

「邪魔!」

俺を一撃で蹴り飛ばし

!!

能力を使ったのだろう。俺の動きも封じだ

「そんな……」

ヘルは燃えたぎる炎にも一切躊躇することもなく。≪聖典≫を手に取り、腰元から刀を取り出しそれを振るいその風で炎を吹き飛ばした。

しかし、それでもその炎は全ては消えなかった。風靡さんのことだから少し変わったものであったのだろうか?普通よりもどうやら消えにくいらしい。それでもヘルは懸命に刀を振り続けた。そして、もう何回振ったか分からないほどふるようやく火は消えた。

しかし、どうやら≪聖典≫はその大部分を損傷したらしい。ヘルは≪聖典≫をみて、戸惑いを隠せていない。

「一体、ボクはどうしたらいい。こんなことになったらボクはお父様に見捨てられ。

いや、それよりも≪SPES≫を敵に回すことになって、ご主人様を」

「ご主人様?」

一体、なんの事だ。お父様?ご主人様?一体なにを?

「こうなったら」

ヘルは俺のところに近づいてき涙ながらに

「キミ、ボクを、ボクたちを助けてよ」

想像もつかなかった事を言ってきた。

ボクたち?ボクたちとはどういう事だ。コイツは一体何を、そして俺はどうすればいいんだ。助けようととはしていたものの想定外の話をされ俺は言葉を返せずにいた。

「任せて。助けるよ。≪名探偵≫の名にかけて、その依頼は私が引き受ける」

自信過剰。そう思ってしまうような言葉も、この相棒が言えば全てを信頼して任せたくなってしまう。

「一体、いつから聞いてたんだ?シエスタ」

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