第21話 ちょい鉄ちゃん

「谷川駅に行って確かめたいことがある」


と次男が言い出してから、一月ばかりが過ぎてしまった。


「そうだね、行こうね」


その時は、すぐにでも行く気満々だったのだけれど、


天気が悪かったり、私に予定があったり、なんやかやと時は過ぎて


私の記憶からそのことが消えかかっていた頃、


「ねえ、明日はだめかな」


と次男に催促され、


そうだった!


と思い出した。


で、思い立ったが吉日で、その翌日、谷川駅ツアーにでかけた。


駅に行くなら、特急「こうのとり」は絶対見たいな・・


(特急の車両っていろいろあるけれど、どうしてあんなにカッコいいんでしょうね)


かなり鉄ちゃんの次男に影響され、ちょい鉄ちゃんの私が提案すると次男も即賛成!


特急が駅につく時間に合わせて行くことにした。


白い雲が際立つ、澄みきったコバルトブルーの青空のもと、


渓流の流れを逆上るようにして車を走らせると、木々の葉の緑が揺れ、


木漏れ日を揺らす・・


車は線路沿いを走ったり、踏切を超えて見えなくなったり、


川向うの線路と並走するように走る、走る、走る・・



コミュニケーションが苦手な次男は、車の中でも私が話しかけない限りは


話さないので、音楽だけが流れていたのだが、曲が変わったタイミングで


「髭男借りたの?」


と確認するように尋ねてきたので、


「うん」


と応えた。


静かなものだ。そして私もこういうの居心地良い。



ナビに案内されて、谷川駅に到着。1時間以内なら無料の駐車場に止めて駅に行き、


時刻案内を確かめる。


あった!電光掲示板に表示されている文字を確認!


予定通りにこうのとりは到着するようで、線路沿いのフェンスの端まで行って


到着を待つ。


踏切が閉まり、カンカンと鳴り出すと、


スマホを構えてワクワクしながら待つ。


しばらくすると、少し右にカーブしながら


こうのとりが優雅にやってきた!


いい!カッコいい!


特急が停まったと同時に、二人で全速力で、特急の進行方向側に走った!


うう・・自分でも驚くが、ちゃんと全力疾走!できてる気がする!


モチベーションすごい。


駅を優雅に離れ、左にカーブして見えなくなっていくこうのとりをスマホに収め、


なんともいえない充実感に浸る私。


そして、その後やってきた下りのこうのとりもバッチリとスマホに収めたのは言うまでもない。


っと、待ってよ。


子どもそっちのけで楽しんでないか?私?


思いっきり楽しみましたね・・ハイ。



とりあえず、次男の谷川駅での目的は、特急こうのとり、普通電車、加古川線の線路がどうなっているかを


確かめることだったし、その目的は遂げたようだし、特急こうのとりの動画も


思うように撮れたようでバッチリ!だと思う。



その後、二人で自分たちの撮った動画を自慢し合ったのは言うまでもない・・


だが、冷静に考えると、酷暑の駅で列車を追っかけている


いい年した大人の親子ってちょっと危ないと思われてたよね・・笑

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