第6話 そこそこ美味しい・・母の飯

「お母さんのご飯は、そこそこ美味しいから毎日食べても飽きないんだよね」


と息子が言った。


「はぁ~?!」


「そこそこですか~?!」


と語尾が上がる返事をしたのは言うまでもない。


毎日、毎日ご飯を作り続けた母に、


そこそこ美味しいとは何という仕打ち・・・




いや、冷静になれば、真っ直ぐに育った息子の、


極々、まっとうな意見であると理解できるが、


その時は、可愛い子に何だか裏切られたような気持ち?っていうのか


ちょっとは気を遣うだろ?


おべんちゃらの一つも言って、母の機嫌をよくしようとかってならない?


という感じ。



その空気を少しは感じたか、息子は言葉を続けた。


「すごく美味しいものは、


ずっと食べてると途端に飽きてもういいやってなるけど、


お母さんのご飯って毎日食べても全然飽きない美味しさなんだよね。


プロが作ったすごく美味しいものとは違うっていう意味でそこそこ・・っていうか・・」



う~ん。



息子のそこそこ美味しいはもしかして、最高の褒め言葉ではないか。


自分がなんとかしなければ料理が口に入らない現状に直面して


毎日出てくるご飯のありがたみに気づいたということではないのか。


しかも、そこそこに腹をたてるほど、私自身、そんなに料理に自信があるわけではない。


1週間とか2週間で同じメニューが繰り返されているし・・


フルタイム勤務だもんね・・


と言い訳をしながら・・。



しかし、ゆずれない健康へのこだわりがあるのだ。


安全な食事は健康の元。


限りがあるウチの会計の範囲内で、


できるだけ添加物や農薬等を避けたいと思うと


お惣菜や冷凍食品もめったに買えない。


毎日食べる味噌汁の出汁は昆布とカツオといりこでとっている。


多分、化学調味料や〇〇の素を使えば、


すごく美味しいであろうし、素敵な名前の料理が食卓に並ぶはずだが、


それは使わないのである。


なので、ちょっと味が足りないとか物足らないとか


メニューが貧困とかは仕方ないのかなぁ・・・という問題はあるだろう。


で、我が家の食卓には、しゅうまいとかハンバーグとか餃子とかきんぴらごぼうとか


そういったありきたりの料理と


豆腐やなんかが素材ごと名もなき料理とともに並んでいるのである。



一人暮らしをしながら、毎日仕事に追われる息子の毎日を思うと、


本当に大変だろうなと思う。


お料理が気晴らしになるくらいの余裕が出てくるまでは、


出来合いのものでもいいから、


3食、栄養のバランスがいいものを食べて元気でいてほしいと思う。



せめて長期の休みくらいは帰省できたらいいなと思うが、


今の厳しい現状では、それも夢のまた夢。


そこそこ美味しい母のご飯すら食べさせてあげられないのが、本当に悲しい。

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