ニラのおひたし (ホラー)
「ビールのおつまみに、ニラのおひたし作ってあげる」
「おっ。気が利くねえ」
夕食が終わり、缶ビール片手にテレビでも観ようかなと思っていたら、片づけを終えた妻がそう言った。
ニラのおひたしはうまい。ビールによく合う、俺の好物だ。
ビールを半分ほど飲み終えたとき、テーブルにニラのおひたしの小皿がとん、と置かれた。
「はい、おまたせ。召し上がれ」
「ありが……」
それはニラのおひたしではなく、合わせ調味料に浸かった真っ黒な髪の毛の束だった。
「めぐみちゃんって、可愛い子ね。ほら、若いから、白髪も一本もないし」
妻が近所の飼い犬を褒めるような、無邪気な声で言った。
俺は口の端からビールを垂れこぼし、いつバレたんだろうと考えた。そして会社から送っためぐみ宛のメールに、未だ返信がないことに気がついた。
「あ、ごめんねえ。白ごまかけるの忘れちゃった」
そう言って妻はキッチンから白ごまを持ってきた。
汁に浸かった真っ黒な髪の毛が、徐々に徐々に白ごまに埋めつくされていく……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます