ニラのおひたし (ホラー)

「ビールのおつまみに、ニラのおひたし作ってあげる」


「おっ。気が利くねえ」


 夕食が終わり、缶ビール片手にテレビでも観ようかなと思っていたら、片づけを終えた妻がそう言った。


 ニラのおひたしはうまい。ビールによく合う、俺の好物だ。




 ビールを半分ほど飲み終えたとき、テーブルにニラのおひたしの小皿がとん、と置かれた。


「はい、おまたせ。召し上がれ」


「ありが……」


 それはニラのおひたしではなく、合わせ調味料に浸かった真っ黒な髪の毛の束だった。


「めぐみちゃんって、可愛い子ね。ほら、若いから、白髪も一本もないし」


 妻が近所の飼い犬を褒めるような、無邪気な声で言った。


 俺は口の端からビールを垂れこぼし、いつバレたんだろうと考えた。そして会社から送っためぐみ宛のメールに、未だ返信がないことに気がついた。


「あ、ごめんねえ。白ごまかけるの忘れちゃった」


 そう言って妻はキッチンから白ごまを持ってきた。

 汁に浸かった真っ黒な髪の毛が、徐々に徐々に白ごまに埋めつくされていく……。

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