シリコンおもちゃ、Youは何しに日本の浜辺へ?

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

貴様らにそんな玩具は必要ない

 浜辺に打ち捨てられているシリコンおもちゃを、キミは見たことがあるだろうか?

 あれがどういう経緯で捨てられたのか、真剣に考察しようではないか!

 

 今日も、浜辺には紅白シマシマのシリコン製の筒が波に乗って砂浜にたどり着く。


「ねーねーおかーさんあれなにー?」


 好奇心旺盛な子どもが、おもちゃを物珍しく指差す。


「しっ見てはいけません!」


 腫れ物に触るように、母親はおもちゃから子どもの視線を遠ざけていった。


 だが、我々は凝視する。『コージー・ミステリ研究会』として、見逃すわけにはいかない! この謎を解き明かせば、本家ミス研の鼻をあかすことも容易だろう。

 

「避妊具は、わかるんですけどねぇ」


 助手の手越くんが、腕を組む。


「ああ。実によくわかる」


 避妊具の場合、打ち上げられたというより、浜辺でハッスルをいたしてそのまま不法投棄されたものだろう。うらやまし……いや、けしからん。


「実にうらやましい限りだ。バーベキューとか花火大会の合間にコッソリ抜け出したカップルが、酔った勢いで始めたのだろう。実にうらやまけしからん」

「こんな妄想してっから、パイセンはモテないんですよぉ。女子に嫌われて、オレまで巻き添え食ってミス研を追い出されちまったじゃないですか」


 手越くんが、もっともらしいことをいう。実際、私はシモネタが過ぎてミス研を追われた。そんなにあの草食系探偵が好きか!


「だがしかし、そんな非モテな我々を愛してくれるのが、『シリコンおもちゃ』なわけだ」


 それを海に捨てるとは、そっちの方がけしからんではないか。

 謎を解き明かし、不法投棄を止めるすべを考えよう、と私は思い至ったのである。


「では、これも不法投棄と言えるのでは?」

「そうなんだが、問題はどこから捨てられたか、だ」

「はあ」

「だいたい、外でセルフプレイとか、レベルが高すぎはしないか?」


 手越くんも「確かに」と相槌を打つ。


 キャンピングカーをドライブインに駐めて、自家発電していた男が逮捕されるという事例もあった。


 それだけ、自家発電はリスクが高いのである。


 発覚したら最後、社会的に死ぬ。


「コンテナ船の海難事故に遭って、海に流れたってのは?」

「ああ! たしかラブドールの運搬事故で、そういう事件があったな」


 ネットでニュースになったことを思い出した。


「公式が謝罪文を出したんだよな?」

「ああ、これっすね」


 手越くんが、海難事故のニュースを見つける。


 つまり、このおもちゃは未使用ってことだな! 実質処女ではないか!


「これは試さずにはいられないな!」

「でも臭います」

「うう、たしかに……」


 海に流れ着いたシリコンは、独特の異臭を放っている。


「あと海水吸っているんで塩分半端ないと思うんで、使うのはやめたほうが」

「うむ。お! あれは新品ではないか!」


 箱入りのシリコンを発見した。これは天啓か! 我々の願いが通じたのだろう! 


「背に腹は変えられん! 謎を解き明かすぞ!」


 私は海パンを下ろす。


「ダメですってパイセン!」

「止めるな手越くん! 先っちょだけ! 先っちょだけでいいから!」


 手越くんを振り払おうとしていると、


「こら! 逮捕する!」

ホイッスルとともに、宿敵の駐在さんが私に手錠をかけた。

「貴様らにそんな玩具は必要ない!」

「何をする! 我々は不法投棄された品を有効活用しているに過ぎん! なんの罪状があってワッパなどかけるのだ!?」

「公然わいせつ罪だよっ!」


 強制連行されるフルチンの私を見て、先程の親子が遠くから指をさす。


「あの人、ブランブランさせてるよ?」

「そう? よく見えないわねぇ……」

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