第6話 魔法のサプリメント(2)共通点

「どの被害者も、薬物を常用していた」

 薬師がそう言ったが、セレもモトもリクも顔色すら変えなかった。

「じゃあ、その売人グループを殺ればいいのか」

 モトが訊く。

 ミーティングの呼び出しがあったので下階の部屋へ下り、薬師から話を聞いている所だが、高校生が薬物を摂取している事くらい、最近ではそう驚くほどの事でもない。

 それなら余程、殺し屋をしている高校生の方が驚きだ。

「そうだ。

 だが問題がある。高校生を相手に売っているせいで、なかなか組織の全貌が掴めん。それに、これまでに死体で見つかった被害者達の役割もわからん。だから、その解明からしてもらう」

 薬師はあっさりと、当然の如く言う。

「まあ、いくら擬態が得意な公安でも、高校生に化けるのはねえ」

 リクがクスリと笑い、そして、気付いたように言った。

「え、と言う事は?」

「セレを潜入させるのか?」

 モトが言い、モトとリクがセレを見、そして薬師を見た。

「頼んだぞ」

 薬師はそう、命令した。


 モト、リク、セレは、資料を囲んで考えていた。

「どこから手を付ける」

 モトが口を開く。

「被害者の通う高校はいくつかに分かれているし、バイトもクラブも、全員が重なる要素は見当たらないな」

 モトが眉を軽く寄せる。

「SNSなんかでつながってる形跡も無かったぜ」

 リクはそう言って、ソファにもたれて天井を見上げて考えた。

 それでセレは、朝、坂上から聞いた話を思い出した。

「今朝見つかった田中ってのと塾が同じだったやつに聞いた話だけど。田中、ミントタブレットを大事に食べてて、絶対に人には渡さなかったらしい」

「それだな」

 モトが言う。

 リクも座り直してセレを見る。

「その塾ってどこだろう……ああ、駅前の」

 資料を見たリクは、パソコンに向かうと、調べ始めた。そしてしばらくすると、面白そうな声を上げた。

「共通点、見ィつけた。

 この塾に勤めているカウンセラーが、学校でもカウンセラーをやってるぜ。まあ、学校は常駐じゃないらしいし、塾は夜みたいだしな。そこの学校にほかの被害者らが通ってる」

 モトが、目付きを鋭く変えて頷く。

「そいつから当たるか。

 カウンセラーだったな」

「何か悩んでいる事にするか」

 セレは考え、

「ま、成績がありふれてるかな」

と結論付ける。

 そして、細かい作戦を相談し始めた。


 カウンセラーは加藤光介、29歳。優しく、塾でも学校でも人気がある。タワーマンションの上階に住み、高級腕時計をいくつも所持していた。

 どう計算しても、加藤の給料とは釣り合わない計算になる。

 しかも、遺産を遺した親類も、貢いでくれる恋人も見当たらない。

 移動には普段から自家用車を使っていて、これは5000万円近い外車だ。

「絶対にクロだね」

 リクが調査結果を見て断言する。

「こいつが売人だとしても、何でああいう死に方をするのかがわからんな」

 モトは、鋭い目を緩める事無く言う。

「セレ、何があるかわからん。気を付けろ」

「ああ」

 セレは短く返事をし、作戦はスタートした。



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