第10話 姉と弟

あっ、これ死んだかも。まだ魔力も回復しきっていない。避けようにも動かない身体。

本当にここで終わりなのか。

ううぅ、俺まだ3歳児なのに……。

あーあ、なりたかったな、SS級冒険者。

冒険してみたかった……。色んな場所に行ったり、お宝を見つけたり、魔獣や強い奴らと戦ってみたかった。来世ってあんのかな……?

さぁそろそろお別れだな……さぁお別れだ……

ってあれ?全然お迎えが来ないぞ?

意を決して目を開けてみる。


「ぷふふ、あーもうダメッ! あははははは!!」


え?


「フフフッ撃つわけないでしょ。でもそんなに私の魔法が怖いってことは私の方が上だって証拠よね!」


くそっ! マジで、死んだかと思ったぞ!

回想にも入ったんだぞ!! 恥ずかしい!!


「あ、あのね。あり……がと」


ん?


「全部分かってるの。アンタは私を励ますために思ってもないこと言ってくれたんでしょ。私より強いわけがないのに。それにさ、ママは私がいつまでもウジウジ落ち込んでる姿、見たくないと思うの。何より、私らしくない! 私はママに誇れる私にならなきゃいけないのよ!! ね、そうでしょ?」



アリアがなんか色々言ってるが、そんな事はどうでも良い。何より俺は俺が生きてて良かった。うんうん…………って、あぁ?

おい! 今のは聞き捨てられないぞ!


「何言ってんだ! 俺の方が強いってのは本音だよ!!」


「な、何よ!! 人がせっかく感謝してるんだから、黙って聞きなさいよ!

あれ?アレン今俺って言った……」


やべっ、俺って使うと母様に注意されるんだよ。まだ俺には早いってさ、よく分からん。


「あ、いや。これは……」


「ふーん、それが本性なのね。フフッそのままで良いわ。私の前では本当のアレンでいなさい……ね?」


なに!? ついさっきまで鬼の様な形相だったのに。急にしおらしくなって……。

ちょっとだけ可愛いと思ってしまった。 

ちょっとだけなんだから!

か、勘違いしないでよね!!


「べ、別に良いけど」


「フフッそうよ。アレンは私には従わないといけないの!」


さっきから無茶苦茶だな、アリアのやつ。


「なんでだよ、嫌だ!」


「だって私はアレンのお姉ちゃんなんだもの。ね、そうでしょ?」


「アリアは……姉だけど、言うことは聞かない!」


「なによ! 弟のくせに生意気よ!!

アリアお姉様と呼びなさい!! じゃないと……魔法撃つわよ!!」


なんて横暴な姉だ、どこの女王様だ。

でも、もし……もし今撃たれたら。

確実に殺られる。プライドを捨てろ、俺!!


「あ、アリア……お姉様」


「ウフフ、なぁにアレン?」


くっ! やっぱりダメだ!!


「こ、この横暴女王め!!」


ハッハッハッ言ってやったぞ!

……はっ!! なんだ?目の前に……鬼?

いや、アリアか! 溢れ出る魔力が鬼を形作っているんだ!!


「やっぱり……受けなさい!! 炎魔法──『炎球フレイムボール』!!」


こ、今度こそ死んだかも。

嫌だぁー! 助けて母様ぁぁーー!!


「ぐほっ!!」


アリアが放った炎の球が腹部に直撃した俺は吹っ飛ばされた。そして本日2度目の気絶を経験した。

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