君と目が合うその瞬間

君と目が合うその瞬間

作者 恋狸

https://kakuyomu.jp/works/16816700426336588435/episodes/16816700426336629479


 更科唯花の推しアイドル・ヒナセに似ていた僕を直視した彼女は気絶してしまう物語。


 恋狸の応募作、三作品目である。

 タイトルは短いが、問いかけになっている。目があった瞬間どうなるかは「読んでのお楽しみに」である。


 日記のような独白な文体。なので説明は多く、描写はすくない。一人称で書かれ、だれに語っているのかわからないが、友達に「この前さあ、こんな事があったんだよね」と自分の身の上話をしているような、そんな作品に思える。

 悲しいことに、主人公の僕には友達がいない。

 なので、この話は友達にではなく、自分自身に語って聞かせるモノローグなのだ。


 途中、「心折れた。ポッキリと。その瞬間僕はポッキンアイスを幻視した。翌日に食べてみたけど何ら味は変わらなかった。ただ、少し塩味だった」ひとりボケツッコミをしながら、乾いた笑いをして自分を落ち着かせてみたり、「だが、彼女は僕の方向を見ようとすると、まるでスカイフィッシュ(280km/h)の如きスピードで視線を逸らすのだ」という空中を高速移動するとされている未確認動物UMAを喩えに用いたり、「僕のガラスメンタルを舐めない方がいいよ。ふふふ。すでに枕は四回変えてるし」と、だれも聞いてもいないことに答えたりしている。四回ということは、少なくとも四日間経過しているということだろう。

 人の脳は、ある行動を三日と半日以上続けると常習化してくれるという。主人公の僕は、枕を濡らすことには慣れっこだということだ。(三日で終わらせると続かず三日坊主になりやすいので、継続したいのなら最低四日はつづけたい)

 こういうところに、僕という主人公の性格が読み取れる。


 強硬手段にでた主人公の僕は、どうして自分を見ないのか問いかけるも、更科唯花は目の前で気絶してしまう。

 なぜなら彼女の推しである『リトルマイアークプリンス』のボーカル担当ヒナセくんに似ていたため、「推しが近くにいるような錯覚で直視できなかった」から。

 一度気絶して、説明した彼女は僕と目が合い、気絶しておわる。

 コントのようなオチがついている。

 作品にかならずオチをつける必要はないけれども、(東西でオチについて捉え方に温度差がちがう)本作にはオチがついていたほうがいい。

 タイトルに相応しいオチだ。

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