『近隣の核弾頭』

やましん(テンパー)

『近隣の核弾頭』


* 日本や世界における、核に対する多くの問題意識や問題そのものについて考察しようとしているわけではありません。


* なにかを批判しようという意図はございません。 


* あくまで、ホラ的おとぎ話であり、フィクションであります。


* 少し、アイロニーがあります。嫌いな方は、読むのはお避け下さい。



    ********************



 日本合衆国の多くの家庭に『殺虫核弾』が装備されるようになって、すでに3年以上経過した。


 核弾と言っても、その威力は極めて微弱である。


 対象になっているのは、ごきさんや、ちゅうさんたちであり、にゃんこやわんこなどには悪影響がないとされている。


 しかし、モルモットさんとか、そうした小型ペットにはいささか危険である。


 だから、使用にあたっては、こうした小さなペットたちは、安全なところに遮蔽する必要があり、そのための『ちゅうちゅうシェルター』とか、『けろシェルター』とか、そういうものまで販売されているが、製造メーカーは、核弾の製造元と同じである。


 人間には、一切影響がないとされるが、使用時には、念のために家からは退避しておくように注意書きがされていた。(あくまでメーカーの言い分であるが。)


 まあ、けむり噴射型の殺虫剤と変わらない扱いなのだ。


 むしろ、そうした化学兵器のような殺虫剤よりも、奇麗で環境に安全であるというのが、製造元の主張である。


 残留放射性物質はごく微量で、環境にはまったく影響ない。半減期の非常に短いモノしか放出されないから、すぐに検知されなくなる、のだとか。


 長年の研究により、害虫、害獣だけに効果があるのだとか。


 ただし、この『殺虫核弾』は輸出は、現在禁止されていたし、海外への持ち出しも禁止であった。


 現状、日本合衆国のみでの販売である。


 なんで、このようなものが、作られるようになったのかと言えば、日本合衆国国民の核アレルギーを削減するのが目的なのではないか?


 という、辛口評論家があった。


 また、日本合衆国国民を、実験台にしているのではないか?


 国際的な核廃絶の動きに逆らっている暴挙だ、とも言われた。


 しかし、この背後には、やはり、地球支配を進める、宇宙ごきの動きがあったんである。


 先の、鳥さんによる白色テロ攻撃に失敗した地球表政府が、宇宙ゴキと手を組んでいる地球裏政府に対する最後の闘いとして、打ち出したのではないか?


 とも言われた。


 しかし、やましんは、あえて、こいつを装備はしなかった。


 ごき軍団と、ちゅう軍団との話しあいにより、そのように要請されたからであり、本人も、まあ、いやだったからである。


 もっとも、さらにこの背後には、ごき軍団など、既存の勢力に所属しない、のらごき、テロごき、のらちゅう、テロちゅうたちが、現在大量発生し、非常に危険な病原体を拡散しているという問題があった。


 やましんちは、ゴキ軍団などが、死守していたが。


 それで、この新型の病気は、世界に瞬く間に広がっており、すでにパンデミックになっていたのだ。


 そうして、それは、宇宙ゴキの策略だと、ねこママはスッパ抜いたのである。



 『で、ママは、誰の、お味方?』


 やましんさんは、確認した。


 『にゃんは、にゃんの味方にゃんこ。』


 『そりゃまあ、そうでしょうけど。』


 『ちゅうがいなくなったら、にゃんは、生きがいを失うにゃん。にゃんは、のらねこ連合の女王にゃん、であることをお忘れにゃんこな。』


 『ああ。そうか。ううん、ママあまりその方面の仕事してないように見えるから。でも、コワイ映画みたいなことにならないかなあ?』


 『まあ、なんとか将軍みたいなものにゃん。でもにゃ、そこを、連中は狙ってるにゃ。ただし、おそらくは、これも、実際のところは、宇宙ごき中の、ごき武闘派が、主導して実行しているにゃんこ。最近、彼らの勢力が優勢になっていて、穏健派の、現宇宙ごき皇帝が間もなく破れ、交代するかもしれないニャン。そうすると、王朝が変わるにゃん。今の地球裏政府は、ごき武闘派に近いにゃんこ。表政府内には、危機意識が高まっているにゃんこ。人類の危機にゃん。あの、未来人が言ったとおりに進んでいるにゃんこな。』


 『ふうん。そういう、裏情報は、報道はされないからなあ。ママからしかこない。なんか、深刻。でも、ぼくにはどうにもならないよ。』


 『宇宙ごきの内紛に、人類全体が巻き込まれる形にゃん。表政府は、そこに抵抗してるにゃん。』


 『それは、良くないなあ。でも、やはり、個人の力の及ばない場所だよな。』


 『それでも、最終的には権力が欲しい人はいるにゃん。そこに分け入りたい人もにゃ。どっち側にも。』


 『まあね。そういうのは、ぼくにはよくわからないよ。なんで、勝たなきゃならない? 引きわけでいいじゃん。』


 『それは、やましんさんくらいだけにゃん。多くの人間は、みんな、競争をしてるにゃん。スポーツも、政治も、職場も、みな競争にゃん。勝たなければ、自己実現ができないからにゃん。野生の世界もそうにゃん。やましんさんは、競争を避けた結果、まもなく絶滅するにゃんこな。』


 『まあ、そうなんですけど。はい。実は、すごく、深刻に受け止めていますよ。奥さんは、同じお墓には入らないとか言ってるし。ぼくのお葬式も不要でしょ、とか言ってるし。まあ、でも、そういうふうに、くくってしまうと、そうだけど。どっか違うよなあ。なんか・・・』


 『だれが、近所で殺虫核弾を持ってるかは、分からないニャン。使用されても、人間には検知しにくいにゃん。何も、感じないニャン。それに、もし、ここみたいに、ごきたちがうろうろしていると、やましんさん、そのうち、自治体から批判されるかもにゃん。』


 『いやあ。それも困るなあ。』


 『そうにゃ。四面楚歌にゃん。そこで。これ。』


 『なに。』


 『新発売の、『模擬核殺虫弾』。こいつを玄関先に置いておくといいにゃん。模擬弾だから、実際の核破裂しないにゃん。ちゃんとやってるが、上手くゆかないと言うアピールにもなるにゃ。』


 『なんだ、ダミー・カメラみたい。それって、偽りだろ。』


 『そうにゃん。嘘も方便にゃん。一個590ドリム。殺虫核弾は、一個3000ドリムするにゃ。お安いにゃん。』


 『ふうん・・・・・・・・・・・なんか、この話し、全部間違っているような気がする。』




  **********************


                   おしまい

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