第7話 レベルアップ

 愛ちゃんにレベルがあると聞いて、レベルの見方を教えてもらった。『ステータス・オープン』


名前  ママ

職業 『はこにわ』のあるじ

レベル F→E  ポイント 1,056

HP 100/100

MP 100/100

・攻撃力A ・防御力A ・速度A ・知力A ・幸運A

<スキル> ――


 ……これは、ツッコミどころ満載ね。レベルが上がっている。この前、鳴っていた音はレベルアップを知らせる音なのね。


「愛ちゃん、聞きたいことがあるんだけど……」

「ママ、何かな~? あっ、先に言っておくね」


 ここはゲームの世界なので、名前に本名は使わないのが普通だと……その通りね。


 ママはボクが作ったから、本名以外は「ママ」しか知らないと……私は、本名も思い出せません。


 そして、『はこにわ』はママのゲームなので、ママがプレイヤーであるじだと……プレイヤーは分かるけど、愛ちゃんが主じゃないの? 


 レベルは、開拓作業を続ければ上がって行くそうです。……分かりました。


 そして、攻撃力とかのステータスは、ママが『はこにわ』の主だから1番だよと愛ちゃんは言う。……1番ってことはレベルの上限はAなのね。


 スキルが無いのは、ママのレベルがまだ低いからだって……へえ~、レベルが上がるとスキルが出て来るのね。


「ママ、レベルが上がってスキルが発生するのはママだけだよ。それだけじゃないけどね。フフフ」


 愛ちゃんは、楽しみがなくなるからと、それ以上は教えてくれなかった。


「ママ、他に聞きたいことある?」

「そうね~。あるじは、私じゃなくて愛ちゃんじゃないの?」

「ママ、ボクは『はこにわ』のAIだけど、ママが育てたんだよ。フフ」


 あぁ、私が色々と教えたって言っていたわね。先生は偉そうだから、自分でママと言っていたと……。


「ねえ、愛ちゃん。私の名前を教えて欲しいんだけど良いかな?」

「うん。ママの名前はね『めぐみ』、佐藤めぐみがママの本名だよ。フフ」


 愛ちゃんは、微笑みながらすんなりと教えてくれた。


「佐藤めぐみ……ありがとう。愛ちゃん」


 名前を聞いても、何も思い出さないなぁ。うっ、頭が痛い……とかもないよ。


「ねえ、愛ちゃん。私が何歳だったか知っている?」

「えっとね、ママが交通事故に遭う前『成人式が終わったよ~』って言っていたよ」


 そっか、私は20歳なのね。


 ◇◇

 それから2日後の朝、ダイニングでミルクティーを飲みながら、日課の開拓作業をチェックする。


【開拓作業①木の橋を作る(指定):1完成 ②水の生物を育てる:メダカ18・フナ14・鯉8 ③畑(小)を作る(指定):人参1・サツマイモ1・キャベツ未・かぼちゃ未・ブロッコリー未・トウモロコシ未】


『木の橋』が出来ていた。次は何を作ろうかと開拓のイベントツリーを見ていたら、愛ちゃんが起きて来た。今日は珍しく愛ちゃんが遅い。


「愛ちゃん、おはよう。橋が出来たみたい。紅茶を飲んだら見に行こう~」

「ママ、おはよう。うん、行こう」


 家の外に出る時、愛ちゃんが天使の顔でニッコリ手を差し出してくる。最近は慣れて来ましたよ。ふふ。


 仲良く手を繋いで小川へ向かった。のんびりしていて、良い気持ちね~。


「愛ちゃん、DNAの人はどうするの?」

「そうだね。ここがゲームの世界だとちゃんと説明して、本人の承諾を取ってからキャラを作るよ。ママは心配しなくていいからね。フフ」


 愛ちゃんは、ニッコリと笑顔で答えてくれる。


「そっか、うん。ちゃんと説明するのが良いね。ふふ」

「うん。でもね、ボクがAIだと分からないように話をするよ。その方が良いと思うんだ」


 愛ちゃんは、この世界に他の人が来ても、私が『はこにわ』のあるじで、開拓作業をしていることも秘密にして欲しいって言う。愛ちゃんと私の理想の世界を作る為のゲームだから……私が、他の人から無理を言われたりしないようにだって、私の心配をしてくれるのね。


「愛ちゃん、分かったわ。ありがとうね」


『木の橋』は、普通の木で出来たシンプルな橋で、大人が3~4人並んで通れる幅だった。


 その後、家の南側に行ってみると、小さな畑が出来ていた。人参とサツマイモの葉が、4株ずつ並んでいる。収穫した後、どれぐらいで育つのか知りたいから人参を1本抜いてみた。


「ねね、愛ちゃん。ハムスターのいる場所はここから遠いって言っていたけど、どこにいるか分かる?」

「うん。ハムスターは、あっちの山のふもとの森にいるよ」

「それは、遠いわね……」


 どんな姿をしているのか見たかったんだけどな~。森まで行くのに、子どもの足でどれだけ時間が掛かるか分からない……あきらめよう。


 愛ちゃんが、「その人参、ボクが後でハムスターに持って行くよ」と言って、人参を預かってくれた。どうやって持って行くんだろう? あぁ~、私がこの世界の主なら、愛ちゃんはこの世界の神様かな。何でも出来そうね。ふふ。






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