第2話 シャッター・アイ
俺の名前はパワード。ホモ・テクスとなった最初の人間の1人だ。なぜ、俺がホモ・テクスになったのかって?きっかけは、例の計画への参加だったよ。俺は、当時、写真を撮るのが本当に好きだったんだ。でも、カメラなんか1つも持っていなかったから、いつもスマホで写真撮影さ。本格的なカメラは高くてお金が出せなかったからね。だけど、趣味で始めた写真撮影も、使用機器がスマホである以上、限界を感じはじめてもいた。そして、新しい発見がない日常に退屈していたことも確かなんだ。だからなのかもな。例の計画「新人類実現プロジェクト」に参加したんだ。今よりも、もっと楽しい体験ができるようになるという誘いに乗っかってね。
この計画の最終的な参加者は、この国では、1万人から10万人くらいだったかな?詳しく覚えてなくてね。すまない。当初の計画では、他の新人類を作る計画もあったそうだが、実現可能性を踏まえて、ホモ・テクスのみに絞ったらしい。そして、ホモ・テクスの特徴を簡単に言えば人間としての機能をできるだけ保持したまま、+αのテクノロジーを取り入れたものだ。
俺の取り入れたテクノロジーは、シャッター・アイ。これは、一言でいうなら、人間の目にカメラの機能を付けた感じ。でも、見た目は普通の人間の目と同じだよ。むしろ、人間の目じゃないってわかる人がいたら褒めたいくらい再現度の高いものなんだ。写真を撮影したいときは、両手の人差し指と親指で、長方形を作って、それを目の正面に持ってくるだけ。そうすると、シャッター・アイが、まあ、俺の場合は右目だけど、それが自動で、これから写真を撮るんだと認識してくれるんだ。そこで、必要と判断されれば……、え?ここで、やってみてほしい?ほら、こーやって……、パシャ。フラッシュ撮影もしてくれるのさ。え、まぶしかった?それは、人の話をさえぎって、いきなりやってくれって言いだすそっちが悪いんだよ。さらに、このシャッター・アイというのは、wifiも内蔵されているから、パソコンにもタブレットにもスマホにも、写真の転送もできるんだ。シャッター・アイの機能の説明は大体こんなもんだよ。
それで、シャッター・アイを手に入れた俺は、楽しい日々を過ごしていた。だって、趣味のために、スマホを持ち歩かなくていいうえに、これまでに誰も試したことがない方法で写真を撮影できるんだ。俺は充実感さえ感じていたよ。でもな、ある日、俺はひどく酔っぱらっていてね。それが、午後21時頃だったかな。フラフラした足取りで、なんとか家にたどり着いたんだ。まあ、バーが元々、家の近くだったからよかったよ。そして、俺は、ベッドで横になりたいがために、シャワールームで、シャワーを軽く浴びることにしたんだ。これがよくなかったんだろうね。俺は、シャワールームの隣にある大きな鏡の前で、あろうことか全裸を撮影して、自分のスマホに転送、さらにはSNSに投稿までしていたらしい。らしいというのは、はっきり覚えているわけではないからね。そうして、酔いが醒めたころには、手錠をはめられてここにいることに気づいたってわけ。
これが俺の知るすべてだよ。どう?聞いて満足したかな、刑事さん?
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