異世界本屋アルバイターは今日も憂鬱

南天穂

プロローグ

 魔法学院都市『エホバ』。王立魔法学院エデンを中心とした都市。

 レンガ造りの建物が整然と並ぶ街道。その一角に小さな本屋があった。


『ノディアーク書店』


 木製の看板に彫り込まれた文字。その下にある色ガラスの嵌った扉を押し開けばカランと軽やかなベルが鳴る。

 本が日焼けしないようにと小さな窓からはあまり陽の光が届かない。その代わりに店内はランプに灯された炎のオレンジ色で照らされていた。

「いらっしゃいませ」

 どこか気だるい声が響く。カウンターに立っている少年が緩やかに口角を上げてこちらを一瞥した。


 これは平穏無事に仕事を終えたいこの少年の物語。

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