「ピザピザピザー」
「日山、うるさい」
神山に注意され、日山が黙って英語の書取りを再開する。うるさかった少年はお母さんと一緒に出て行って、部屋はとても静かになった。しばらくして、車の発進音が聞こえた。日山は口だけ動かして、また「ピザピザ」と、言った。
「なあ神山。これってどうやって解くんだ?」
「どうした月山。そんな問題も分からないのか?」
「日山には聞いてない」
「数学なら僕に任せてよ!」
「いやだって、お前だって忙しいだろ?」
「英語ばっかり飽きた」
「なら社会か国語でもしてろ」
神山は、日山に冷たい。それは、気の置けない関係だからだろう。あっくんとはよく喋ってる。俺とは……会話自体あんまりない。少年に言われたことを考えると、神山に嫌われているのかも知れないなと思えて、少し落ち込んでくる。
『山口くん。山口くん』
どこからか、俺を呼ぶ声が聞こえる。
『山口くん』
「ぅわっ!」
突然、ノートから白い狐の首が出てきた。声を上げ後退った俺に、みんなの視線が集まる。
「あ、えっと」
『聖子が呼んでる。下に来て』
「へっ?」
聖子って、神山のお母さんだよね? ピザ買いに行ってくれてるんじゃ?
みんなの、不思議そうな視線が痛い。
『トイレって言えばいいでしょ。早く来なさい』
狐は、ドアの前で俺を振り返り、急かすように言った。不思議そうな顔で俺を見る、みんなの視線が痛い。
「ごめん。俺、トイレ」
慌ててドアに向かう俺に「あんまり急いで漏らすなよ」と、からかっているのか心配しているのか分からない日山の声が届き、神山には「ゆっくりしてこい」と言われた。
恥ずかしさといたたまれなさで、返事もせずに部屋を出た。
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